2020年07月28日
ディック・ロングはなぜ死んだのか? (原題:THE DEATH OF DICK LONG)
監督:ダニエル・シャイナート(『スイス・アーミー・マン』)
脚本:ビリー・チュー
出演:マイケル・アボット・ジュニア、ヴァージニア・ニューコム、アンドレ・ハイランドサラ・ベイカー、ジェス・ワイクスラー、ロイ・ウッド・ジュニア、スニータ・マニ
バンド仲間のジーク(マイケル・アボット・Jr)とアール(アンドレ・ハイランド)、ディック(ダニエル・シャイナート)がガレージでバカ騒ぎをしていると、突然、あることが原因でディックが死んでしまう。警察は殺人事件とみて捜査を開始する一方、ジークとアールはディックの死因を知りながら、自分たちの痕跡を消そうと躍起になっていた。
『スイス・アーミー・マン』は何とも不思議な怪作だった。本作も全く異なる意味で奇想天外な作品だ。両作の監督ダニエル・シャイナートがタイトルロールのディック・ロングを演じている。摩訶不思議な世界を構築する人はこういう顔なのか…とまじまじと見入ってしまった。ディック・ロング(この名前からしてふざけている!)の怪死事件に隠された信じがたい秘密とは?
「え〜っ?」
「あら?」
「嘘でしょ!」
という展開としか説明できないけれど、状況がどんどん悪い方向へ向かって行く。でも、登場する人物たちは至って真面目…。シャイナート監督の故郷、米国南部を舞台にした本作は、コーエン兄弟の『ファーゴ』を想起させる味わい。
思慮もなく行き当りばったりに突き進む田舎コミュニティのおバカな人々への共感と愛情深さを感じさせる映画だ。
『スイス・アーミー・マン』と同じく、ダーク・コメディなのだが、観終わると何故か優しさに包まれている。もう一度最初から観直したいという気持ちになるのは予想外だった。(幸)
ここで描かれているのは、いつまでも子供のままの男たち。本当のことが言えず、つい、ついてしまった嘘がどんどん大きくなってしまう。彼らの嘘は限度を超してしまったが、男性って多かれ少なかれ、似たようなことをやっているのではないかと思えてくる。
一方、女性たちはタフなキャラクターばかり。惚れ惚れする。だから男はいつまで経っても大人になり切れないのか。いや、性差の問題ではなく、持って生まれた性格の違いなんだろうな。丸ごとひっくるめて誰もが愛しい存在であることが作品から伝わってきた。
ところで、ディック・ロング役は何人か大物に声を掛けたれけど誰もやりたがらず、監督自ら演じたそう。「南部をからかっていると思われたくないので、自分がやることで正直、奇妙な安心感があったよ。いい意味でディック・ロング役を演じることでプライドを捨てることができ、タイトル名の役だから自尊心も満たされたよ」と監督は語っていた。確かにこの役を演じるのは、ハードルが高いかもしれない。。。(堀)
2019年/アメリカ映画/ビスタサイズ/100分/PG12
提供:ファントム・フィルム/TCエンタテインメント
配給:ファントム・フィルム
©2018 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
公式サイト:http://phantom-film.com/dicklong-movie/
★8⽉7⽇(⾦)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、 新宿シネマカリテほかにて公開★
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