2020年07月23日
LETO -レト- 原題:Leto 英題:LETO(The Summer)
監督:キリル・セレブレンニコフ
出演:ユ・テオ、イリーナ・ストラシェンバウム、ローマン・ビールィク
1980年代前半、ソ連時代のレニングラード。西側諸国(資本主義諸国)の文化は禁忌とされていたが、L・ツェッペリンやT・レックスなどの影響を受けて、アンダーグランドの活動ながら、ロックバンドを組む若者たちがいた。中でも「ズーパーク」は人気を博していて、リーダーのマイク(ローマン・ビールィク)に、ロックスターを夢見るヴィクトル(ユ・テオ)は「大ファンです。僕の曲を聴いてください」と大胆にも声をかける。ヴィクトルの歌を聴き、才能があると見込んだマイクは、共に音楽活動を始める。一方、マイクの妻ナターシャ(イリーナ・ストラシェンバウム)とヴィクトルの間には淡い恋心が芽生える・・・
ロシアの伝説的なロックバンド「kino(キノ)」を創設したヴィクトル・ツォイ。自ら曲を書き、ヴォーカルとして活躍。10枚のアルバムをはじめとして多くの音楽作品を生み出した。『僕の無事を祈ってくれ』(88)で映画初主演を果たし、名声を得る。1990年8月15日、新アルバム制作のために短期滞在していたラトビアで交通事故に遭い、28歳の若さで命を落とす。人気絶頂だった彼の突然の死はファンに衝撃を与え、後追い自殺する者もいたという。
夏の浜辺で、思い思いに歌って過ごす光景は、自由主義国となんら変わらないように見える。でも、ロッククラブの幹部が、「ソ連のロッカーには、社会的役割がある。貧乏くさいのはダメ」と語る場面があって、いかにも社会主義国らしい感覚。そんな規制がある中でも、ロシア語で自分の思いを歌ったヴィクトル。突然の死が、彼を伝説にした。
風貌が東洋的なのは、彼が朝鮮人とロシア人の間に生まれたから。父親は極東ロシアに住んでいた朝鮮人でカザフスタンに強制移住させられた方。ここにもソ連的な事情が見える。
ヴィクトルが歌う背景に、アフガニスタンに派兵させられる若者たちの姿が映る場面があった。母親が「コーリャ、アフガニスタンに行くの?」と叫んでいて、無事に帰ってこられるのだろうかと心配する母親の思いがぐっと迫った。1979年の年末に突如アフガニスタンに侵攻したソ連。撤退するまでの約10年間に、多くの若者が命を落としたことと涙。(咲)
『LETO -レト-』本編映像 パッセンジャー編
YouTube: https://youtu.be/mS06WyTcHdA
トロリーバスの中でヴィクトルが乗客たちと共に歌いだすミュージカルのような場面。
モノクロの実写の上に白でアニメーションを施したポップな映像に、思わず本編を観たくなること請け合います♪
第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、カンヌ・サウンドトラック賞最優秀作曲家賞受賞
2018年/ロシア・フランス/スコープサイズ/129分/モノクロ・カラー/英語・ロシア語/DCP/5.1ch
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://leto-movie.jp/
★2020年7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
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