2020年07月19日
ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶
監督:太田隆文(『朝日のあたる家』『明日にかける橋』)
撮影:三本木久城 吉田良介 音楽:サウンドキッズ 題字:大石千世
声の出演:栩野幸知 嵯峨崇司 水津亜子
ナレーション:宝田明 斉藤とも子
【 証言者 】
上江洲安昌 知花治雄 上原美智子 照屋勉 長浜ヨシ 川満彰 比嘉キヨ 佐喜眞道夫 真栄田悦子 座間味昌茂 松田敬子 島袋安子 山内フジ 瑞慶覧長方 平良啓子 吉浜忍 平良次子 吉川嘉勝 知花昌一 大城貴代子 他
第2次世界大戦末期、日本で唯一地上戦となった沖縄。当時の沖縄の人口の3人に1人、12万2282人が命を落とした。それが米軍からの攻撃だけでなく、日本の軍国主義によりもたらされた悲劇だったことを経験者の証言で伝えるドキュメンタリー。
1945年3月、米軍が沖縄に上陸。
本土決戦準備の時間稼ぎのために沖縄は捨て石にされ、14歳以上70歳まで男女全員が徴用され、戦闘協力を強いられた。
日本軍のことを沖縄の人たちは友軍と呼んでいたが、日本軍は食糧を奪ったり、壕に一緒にいると、泣いている赤ちゃんを母親に殺させたりした。軍隊の本質はどう戦うかで、住民を守ることは考えていなかったのだ。
さらに、集団強制死(集団自決)が起こったのも、民間人と軍が一緒にいた壕でのことだった・・・
沖縄上陸作戦から、戦闘終了までを、米軍が撮影した記録フィルムも用いて時系列で伝えながら、経験者や専門家の証言をはさんで、当時のことがまざまざと伝わってくるドキュメンタリー。
これまでにも、沖縄戦や、その後の沖縄に関する映画の中で市民が地上戦に巻き込まれたことを描いたものは多々ありますが、本作は戦争を知らない世代にわかりやすく伝わる映画です。
証言した人たちは、当時はまだ子どもでしたが、今は80歳以上。もう生の証言を集めることのできる最後の機会と思うと、その意味でも貴重な作品です。
中でも、証言者の方が、集団自決ではなく集団強制死と語っていたのが印象に残りました。
米軍が「殺さないから出てきなさい」と日本語で示しても、日本軍が女性はレイプされ、男性は殺されると言って外に出さず、あげく、米軍が壕に入ってきたときには、親に子を殺させ、親には自決を促したとの証言がありました。
同じ読谷村で、別の日本軍がいなかった壕では、ハワイに26年在住して帰国した男性が英語で米軍と交渉し、全員生存しているのです。
軍国主義教育が行き届き、軍の命令に従わないのは売国奴と言われた時代です。
さらに沖縄では、皇民化教育の一環で、沖縄的なものを排除し、学校教育では標準語で沖縄の言葉を使わせなかったそうです。日本軍が沖縄を差別していることを、米軍は利用できると思ったともいいます。
今も沖縄は日本の敗戦の重荷を一手に引き受けている状態です。悲しい記憶を引きずっている人たちに、それはあまりに過酷なことではないでしょうか。(咲)
沖縄戦関係の映画を、シネジャのサイトより紹介します。あわせてご覧ください。
『ぬちかふぅ-玉砕場からの証言―』 製作報告会見
http://www.cinemajournal.net/special/2009/nuchikafu/index.html
『沖縄うりずんの雨』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/420978086.html
『戦場ぬ止み』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/419005267.html
『標的の島 風(かじ)かたか』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/448654152.html
『標的の村』三上監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hyoteki/index.html
『沖縄スパイ戦史』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/460792611.html
『米軍アメリカが最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』
佐古忠彦監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2019/kamejiro2/index.html
2019年/105分/日本
制作:青空映画舎
配給:渋谷プロダクション
製作:浄土真宗本願寺派(西本願寺)
公式サイト:http://okinawasen.com/
★2020年7月25日(土)より新宿K’s cinemaにてほか全国順次公開
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