7月18日シネスイッチ銀座で公開 劇場情報
監督:アナ・ルイーザ・アゼベード
製作総指揮:ノラ・グラール
脚本:アナ・ルイーザ・アゼベード、ジョルジ・フルタード
脚本協力:セネル・パス
出演
エルネスト:ホルヘ・ボラーニ
ビア:ガブリエラ・ポエステル
ラミロ:ジュリオ・アンドラーヂ
ハビエル:ホルヘ・デリア
アウレア・バチスタ
ブラジル発の心温まる物語!
ブラジル南部ポルトアレグレ出身のアナ・ルイーザ・アゼベード監督の作品。
この街に住むエルネストは78歳で一人暮らし。隣国ウルグアイからやって来て46年。
部屋には本がたくさんあり、写真も部屋中に飾ってあり、教養もありそうだけど、融通がきかず頑固者。だんだん目が見えにくくなっている。そんな父を見て、サンパウロに住む息子のラミロは一緒に住もうと言い出すが耳もかさない。隣に住んでいるのはアルゼンチンから来たハビエル。年の頃は同じくらいで、数少ない友人でもある。
ある日、エルネストのところにウルグアイから1通の手紙が届いた。差出人はウルグアイ時代の友人の妻からだった。ハビエルが読もうかというが、強がって「大丈夫」と答えたもののやはり字が見えない。通ってくるブラジル人の家政婦に読んでもらおうとしたが、ポルトガル語ならともかく、スペイン語のためうまくは全部は読めずにいた。ただ、わかったのは友人が亡くなったということ。
*ブラジルの公用語はポルトガル語。ウルグアイ、アルゼンチンの公用語はスペイン語。
偶然知り合ったブラジル娘のビアが手紙を読んでくれるようになった。返信の代筆も。これがきっかけで二人の交流が始まる。ビアはそのアパートに叔母がいて手伝いで出入りしているというが嘘だった。しかし、ビアの嘘もわかった上で交流を続ける。「手紙の読み書き」のため、一人暮らしのエルネストの部屋にビアが出入りするようになるが…それは、エルネストの人生が変わる始まりだった。
仕事も恋もうまくいっていないのかワケありのビア、隣人ハビエルは心を許せる友人ではあるけど、ついつい強がりを言ってしまう。ウルグアイの友人の妻ルシア、父を手元に呼ぶかわりにアパートを売り払おうともくろむ息子。そんななかで心を正直に伝えられないエルネストが最後に宛てた手紙の相手は?
ほんのり苦くて可笑しくて、あたたかいラテンアメリカの話。
コロナ禍の緊急事態の中、2ヶ月近く自粛して自宅待機していたのですが、解禁になった時に最初に観たのがこの作品でした。久しぶりの外出に足も体もよろよろふらふらと出かけたので、この作品の内容が身につまされました。でも、映画を観る喜びとともに心温まる内容に、私もうまくこの状態を打破できるか希望をちょっと持つことができました。年を取ると若い頃と違って、思うように動いたり行動したりできなくなってきます。エルネストはどんな生涯をへてこのアパートで暮らしているのかはわかりませんでしたが、部屋の様子から写真をやってきた人だろうなということはわかりました。部屋にたくさんの写真が飾られていて写真の引き伸ばし機がさりげなく写ったからです。
日本からブラジルに移住した人たちはほとんどが農業移民でしたが、国内で食べていけなくなった人がほとんどでした。でもエルネストはブラジルに渡って46年ということなので、1975年前後にブラジルに渡ったのでしょう。南米各国で軍政下などで避難民が多く出た時期でもあります。それを逃れての移住だったのかもしれません。そのへんも知りたいと思いました。
ブラジルはかつて「人種のルツボ」といわれていましたが、いろいろな国からの移民が多かったからでしょう。私自身は実は中学生くらいの頃にアマゾンに興味をもち、それからブラジルに移住したいと考えていたので、中学生の頃、ブラジル、アマゾン、移住関係の本をずいぶん読んだ覚えがあります。とうとう移住はできませんでしたが、いつか南米に行ってみたいとずっと考えていました。そして、去年、ピースボートの船で世界一周の船旅に出た時に、ブラジル(リオデジャネイロ)、ウルグアイ(モンテビデオ)、アルゼンチン(ヴィエノスアイレス)に立ち寄りました。そんなこともあり、この映画に出てくる3カ国の関係とか興味深かったです。
また、スペイン語とポルトガル語は意外に近い言語のようです。この旅でも実感しました。私は英語もそんなには話せないし、ましてやポルトガル語(アルファベットといくつかの挨拶言葉で挫折)もスペイン語(旅に出る前にTVでスペイン語講座を見たり、船の中のスペイン語講座にも行ってはみたけどほとんど覚えられず)もほとんどわからず状態ですが、この3カ国の街中では英語は全然通じず、いくら得意でないといっても英語が通じないのは買い物などにとても不便でした。この作品ではブラジル娘のビアがスペイン語の手紙の代読と代筆をするというのがミソでした。そしてラストの展開に注目!(暁)。
人生、まだまだ何が起こるかわからない!
エルネストは、手紙が読めないほど目も見えなくなっていて、息子も一人暮らしを心配して呼び寄せようとしています。まさに老いていくのみの様相。ところがどっこい! こんな人生を私も送りたいという選択をするのです。関連して色々書きたいことがあるのに、ネタバレになるので書けないのが、すご~く残念です。ぜひ、ラストを楽しみにして劇場でご覧になってください。
舞台になっているポルトアレグレは、ブラジル最南部の町。アナ・ルイーザ・アゼベード監督の住む町で、ヨーロッパからの移民が多く、白人が80%。また、ウルグアイやアルゼンチンと近いので、両国での独裁政権の圧政から逃れて移住してきた人も多いとのこと。彼らは母語のスペイン語と、ブラジルのポルトガル語をミックスした「ポルトニョール」を話しているそうです。
主役のエルネストを演じたホルヘ・ボラーニは、ウルグアイの名優。『ウィスキー』(2004年)で、やはりブラジルに住むウルグアイ人の役でした。隣人の友人ハビエルはアルゼンチンから来た設定で、演じているホルヘ・デリアは、やはりアルゼンチンの方。
エルネストやハビエルが、どういう事情でポルトアレグレに移住してきたかは、言葉の端々や手紙の内容から類推するしかないのですが、知らない土地で、冗談を言いあえるいい隣人に恵まれたいものだと思わせる関係です。
まだまだ書きたいことはいっぱい♪ 心に響く映画です。(咲)
参考資料(暁)
やっと映画を観に行き始めました。そしてあっという間に3週間
(『ぶあいそうな手紙』試写を観にいった時の話が載っています)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/475968319.html
公式HP
2019年製作/123分/ブラジル
原題:Aos olhos de Ernesto
配給:ムヴィオラ
2020年07月12日
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