2020年07月03日

もち

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監督・脚本:小松真弓
撮影:広川泰士
出演:佐藤由奈(ユナ)、蓬田稔(お爺ちゃん)、佐藤詩萌(シホ)、佐々木俊(タツ兄)、畠山育王(先生)

岩手県一関市本寺地区。中学3年生のユナのお祖母ちゃんが亡くなった。
葬儀の日は餅つきをしてみんなで食べるのがこの地区の習慣だが、最近は電動餅つき機にとって代わっている。お爺ちゃんは昔ながらの臼と杵を使った餅つきにしたいと譲らない。ユナは簡単なほうがいいのに、と思いながらもお爺ちゃんにとって大事なことなのだろうとそばにいる。
ユナの中学校はユナたちが卒業した後、廃校になることが決まっている。お祖母ちゃんが亡くなり、学校が無くなり、友達もみんな離れていくだろう。「いつか思い出せなくなる」とユナは不安だ。

ユナの住んでいる本寺地区は中世の昔、骨寺村荘園があったところ。今も営々と農業が続けられ、「陸奥国骨寺絵図」(重要文化財/中尊寺蔵)の面影をとどめているそうです。身体と心が大きく成長する思春期のユナは、不安や疑問を抱えています。変わらないように見えた周囲でも少しずつ変化はあり、思い出は積み重なって更新されていきます。
それでも意識して「忘れない」ように大切にするものもあります。なぜそうしなくてはいけないのか?ユナと一緒にものを真っすぐに見て、感じてみてください。登場する役者さんは演技経験のない、そこの住民の方々です。伝統の神楽を練習する子どもたちが真剣で、ユナが凛々しいです。小松監督・脚本のドラマですがドキュメンタリーかと思うほどリアルなのは、小松監督の丁寧な取材と自然な反応を引き出す演出力のたまもの。あなたが忘れたくないものは何ですか?(白)


タイトルはシンプルに「もち」。こだわりは「臼と杵で餅をつくこと」。でも、個人の家で餅をつく文化は日本ではだんだん薄れてしまった。この一関の本寺地区では葬儀の時に餅つきをして、出席した人たちで餅を食べるのが習慣らしい。「葬儀でもち」というのが珍しいと思い、「臼で杵でついた餅にこだわる」というところで我が家の餅つきを思い出した。
日本では正月に餅を食べる習慣が多いけど、我が家でも年末の12月30日に餅つきをしていた。かれこれ30年、1980年頃までは年末になると餅米をかまどでふかして臼と杵で餅をついていた。それもこれも、父が臼と杵で餅をつくことにこだわっていたから。官舎に住んでいた1975年頃までは木の臼、木の杵を使っていた。そのうち、この木の臼と杵が古くなって使えなくなってからは、散々探し回って石臼と木の杵にした。そしてかまども新しくした。あの頃、薪を集めるのにも苦労はなかったし、官舎にいた周りの人たちも餅つきがめずらしくて、餅つきの時にはみんな集まってきて、つきたての餅を餡や黄粉、大根おろしで絡め餅にして、みんなで一緒に食べた。懐かしい思い出。3,4日前から小豆を煮て餡を作る準備をしていた。
自宅を建て郊外へ引越ししたのは1977年頃。その頃には近所迷惑になるから薪を燃やすことができないかと思ったけれど、年1回のことなので近所に前日挨拶に回って「明日、餅をつくので」と断って、薪を使って餅米を外で蒸かし餅をつきをした。小さい頃は父と母で餅つきをしていたけど、私も中学生頃には餅つきを手伝うようになり、杵で餅をつく力仕事を担うようになった。そして、父が60歳をすぎた頃にはさすがに体力的に厳しくなり餅つきはやめた。
昭和30年代、地方ならともかく都内の個人の家で餅つきをするというのは珍しかったけど、今や地方でも神社やイベント以外で餅つきをするのはほとんどなくなり電動の餅つき機に変わってしまっている。この映画を観てそんなことを思い出し、時代の流れ、文化の伝承、こだわり、忘れたくない思い出などを考えた(暁)。


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初日舞台挨拶 小松真弓監督、及川プロデューサー


2019年/日本/カラー/61分
配給:フィルムランド
(C)TABITOFILMS・マガジンハウス
http://mochi-movie.com/
★2020年7月4日(土)ユーロスペースほかにてロードショー
posted by shiraishi at 20:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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