2020年06月27日
悪の偶像(原題:IDOL)
監督:イ・スジン
脚本:イ・スジン
撮影:ソン・ウォンホ
出演:ハン・ソッキュ(ク・ミョンフェ)、ソル・ギョング(ユ・ジュンシク)、チョン・ウヒ(リョナ)
市議会議員のミョンフェは来る知事選での有力候補。順風満帆な政治家人生を送ってきたかに見えたが、ある夜息子のヨハンが飲酒の上交通事故を起こしてしまったことで一変する。ヨハンは血まみれの被害者を車に乗せて帰宅していた。ミョンフェは自らのクリーンなイメージをできるだけ守るため、遺体を現場に戻したうえ、ひき逃げ事故を起こした息子を自首させる。
被害者はユ・ジュンシクの一人息子プナンだった。プナンは新妻のリョナと新婚旅行中で、リョナは身重のまま行方不明になっていた。ジュンシクは息子の忘れ形見になる孫と嫁を、ミョンフェにとっては、事故を目撃しているはずのリョナを必死に探し続ける。
加害者の父・エリート政治家ミョンフェをハン・ソッキュ、被害者の父・工具店を営み男手ひとつで息子を育てたジュンシクをソル・ギョング。役柄にぴったりのキャスティングではありますが、たとえ役柄を取り換えたとしても、この二人なら違和感なく演じた気がします。
初めにミョンフェの息子が事故を起こしたと知ったときに、自分の保身が一番にあったのが間違い、その後の悲劇のもとでした。どんなに取り繕うとも、あったことを消すことはできません。それでもあがいてしまうのが人間の業なのでしょう。父親二人の苦悩に一ひねり加えられたのがリョナの存在です。イ・スジン監督の前作『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』(2013)はリョナ役のチョン・ウヒが主演。未見なので観てみたいです。(白)
ハン・ソッキュとソル・ギョングが演じる2人の父親がこの作品の柱ですが、チョン・ウヒが演じるリョナも強烈な印象を与えます。スジン監督は新人俳優をキャスティングしたいと思っていたそうですが、リョナを思い浮かべるたびにチョン・ウヒの顔が鮮明になり、残酷なキャラクターを演じられる心身ともにタフで健康な俳優はチョン・ウヒしかいないと確信したそうです。
脚本も書いた監督に残酷なキャラクターと言わしめるリョナ。猟奇的な側面もあり、サスペンスタッチの本作にホラーっぽさを銜えています。チョン・ウヒは円熟味あふれるハン・ソッキュとソル・ギョングの演技にも勝るとも劣らぬ強さを放っていました。(堀)
2019年/韓国/カラー/シネスコ/144分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2019 CJ CGV Co., Ltd., VILL LEE FILM, POLLUX BARUNSON INC PRODUCTION All Rights Reserved
★2020年6月26日(金)よりシネマート新宿ほかロードショー
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