2020年06月27日
さらばわが愛、北朝鮮 原題:굿바이 마이 러브 NK/Goodbye My Love, North Korea
監督:キム・ソヨン
撮影:カン・ジンソク シン・イムホ
編集:キム・ソヨン カン・ジンソク
録音:チョン・ジヨン
美術:キム・テフン
製作:カン・ジンソク
1952年、北朝鮮からスターリンの時代のモスクワ国立映画大学に留学した8人。
1953年にスターリンが死去。北朝鮮では、スターリン批判から派生した内紛「宗派事件」が起こり、ソ連と北朝鮮の関係が悪化。留学生にも帰国命令が出されるが、8人は金日成を批判し、亡命を決意する。1958年のことである。ソ連はフルシチョフの時代となり、「雪解け」で文化の自由化が始まった時期である。
本作は、キム・ソヨン監督の《女性史3部作》に続く《亡命三部作》の完結編。
(キム・ソヨン監督のプロフィールについては是非公式サイトをご覧ください)
彼女が製作に取りかかった時の生存者であるカザフスタンで映画監督として生きたキム・ジョンフンとチェ・クッキンへの直接取材、そして、作家になったハン・デヨンのロシア人の妻などへのインタビューを通じて、亡命後の8人の「その後」を追っている。
ソ連に亡命後、中央アジア朝鮮民族のための“高麗劇場”の作家となったハン・デヨン(後に改名してハン・ジン)。
「ムクドリ」「肖像画」などの小説で高麗人二世の文学をリードしました。
亡命した8人は、自分たちのことを「8真」と称していましたが、ソ連の意向で8人は、モスクワ近郊、カザフスタン、イルクーツク、ウクライナに分散移住させられました。
学生寮を背景に撮った集合写真(上記チラシの画像)に、その後の運命を思うと涙が出ます。
映画監督、撮影監督、作家として名を残した人もいますが、仕事や住まいを探すのに苦労し、貧しいまま亡くなった人もいます。
何より、亡命したということは、故郷に戻れないということ。
肉親とは生き別れ、お墓参りにもいけません。
試写に伺ったときに、宣伝の担当者の方から、「タイトルにドキッとするでしょう?」と言われました。私がレスリー・チャンのファンだとお見通しだったのでしょうか?! もちろん、この邦題は『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)をもじったわけではなく、原題を直訳したもの。『さらばわが愛、北朝鮮』は、まさに故郷である北朝鮮への決別の言葉です。
映画の冒頭、
何事も始まりも終わりも大事。
生まれた地は故郷と呼ぶが、骨を埋める地は何というのだろう…
と、掲げられます。
歴史に翻弄され、生まれ故郷を二度と訪れることのできなかった人たちにとって、骨を埋めた地が、幸せな思い出の残るもう一つの故郷であってほしいと願うばかりです。(咲)
北朝鮮からスターリンの時代のモスクワ国立映画大学に留学した8人は北朝鮮に帰れば、エリートの道が約束されていたはず。それを捨ててソ連に亡命し、最後まで北朝鮮に帰ることはかないませんでした。
作品冒頭に「生まれた地は故郷と呼ぶが、骨を埋める地は何というのだろう」という言葉が出てきます。この言葉が頭から離れなくなりました。そして、それ以上に心に刺さったのが韓国公開当時、唯一の生き残りだったキム・ジョンフン氏が語った「生きている間に言葉は3回変わったね。日本語から朝鮮語、ロシア語、カザフスタン語。たまにこういう質問を受けるよ。『あなたは何語で考えるの?』」という言葉。日本人として責任の一端を感じずにはいられません。
ハン・デヨン氏は亡くなっていたものの、ロシア人の奥さまがご存命で、夫が描いた仲間の肖像画をバックに夫との出会いなどの思い出を語ってくれました。
政治に翻弄され、異国の地で生きるしかなかった人の思いを埋もれさせないというキム・ソヨン監督の強い意志を感じるドキュメンタリー作品です。(堀)
映画のことを学ぶため、北朝鮮からモスクワの映画大学に留学した8人の若者たち。母国で金日成の個人崇拝がはげしくなり、それに反発して北朝鮮に帰ることをあきらめソ連に亡命した。今回、この映画がなければ、そういう人たちがいたということを知るよしもなかった。世の中数奇な運命をたどった人というのは数々あれど、そういう事実は何らかの形で残さなければ時代の流れとともに忘れられていくわけだけど、韓国人であるキム・ソヨン監督はどのようにして彼らのことを知ったのだろうか。いろいろな人生の掘り起こし。映画はそれを伝えてくれるのに最高の手段だと思う(暁)。
2017年/韓国/カラー/デジタル/80分
©822Films+Cinema Dal
日本版字幕:小川昌代
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/goodbymylovenk/
★2020年6月27日(土)新宿K's cinemaにて公開
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