2020年06月14日

ドヴラートフ レニングラードの作家たち  原題:Dovlatov

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監督:アレクセイ・ゲルマン・ジュニア
撮影:ウカシュ・ジャル 
美術・衣装:エレナ・オコプナヤ
出演:ミラン・マリッチ、ダニーラ・コズロフスキー、スヴェトラーナ・ホドチェンコワ、エレナ・リャドワ

現代ロシアの作家セルゲイ・ドヴラートフの、ある6日間に迫った物語。

1971年、ロシア革命記念日である11月7日を目前にしたソビエト、レニングラード(現サンクトペテルブルク)。
ドヴラートフは新聞や雑誌に小さな記事を書いて原稿料を得ながら文筆活動に勤しんでいるが、政府の厳しい統制のもとで自身の作品を発表できないでいた。妻エレーナとは別れ、娘カーチャとはたまにしか会えない。
友人で、のちにノーベル賞を受賞する詩人ヨシフ・ブロツキーや、女優のセリョージャなどと集い、自由に活動できないことを憂いながらも、30代の若者らしくエネルギーに溢れ、希望に満ちていた。そんな中、親友で画家のダヴィッドが闇取引で捜査を受ける途中で不慮の交通事故で亡くなってしまう・・・

監督のアレクセイ・ゲルマン・ジュニアは、27歳の時にドヴラートフの小説に出会い、一気に全作品を読み尽くしました。監督にとってドヴラートフは、ロシア文学のスーパースター。いつか映画にしたいと思いながら15年が経ち、ようやく完成させました。
1971年という年は、監督の父でやはり映画監督のアレクセイ・ゲルマンが、映画『道中の点検』を発表したものの、検閲で上映禁止処分を受けた因縁の年。第二次世界大戦後のソ連では、1953年に独裁者スターリンが亡くなった後、「雪解け」で文化の自由化が始まり、1960年代には従来のソ連ではありえなかったような文学・芸術の新しい波が勃興しました。ですが、1968年にチェコの自由化の動きにソ連が介入したのを機に、政治的な締め付けが再び厳しくなりました。そんな時代の物語です。

詩人ヨシフ・ブロツキーは自由な表現を求めてアメリカに亡命。その後、ノーベル賞を受賞。
ドヴラートフも、創作の自由を求めて、レニングラードを去り、エストニアのタリンの新聞社に勤めた後、亡命しアメリカに渡りましたが、48歳の時、心臓発作でご逝去。ドヴラートフご自身、後に故国で著書が出版されることも知らずに亡くなってしまったことに涙です。
政治に翻弄されながらも、自らの思いを表現したいと抗った若き芸術家たちの姿が瑞々しく描かれていて、素敵な映画でした。
最後の場面、身体の大きいドヴラートフが車の屋根の上に乗っている姿は微笑ましくもありました。(咲)


2018年/HD/シネマスコープ/5.1ch/126分/ロシア
配給:太秦
公式サイト:http://dovlatov.net/
★2020年6月20日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開




posted by sakiko at 11:29| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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