2020年06月09日
タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング 原題:Touch Me Not
監督・脚本・編集: アディナ・ピンティリエ
出演: ローラ・ベンソン、 トーマス・レマルキス、 クリスティアン・バイヤーライン、 グリット・ウーレマン、 ハンナ・ホフマン、 シーニー・ラブ、 イルメナ・チチコーヴァ、 アディナ・ピンティリエ
寝たきりの父親の介護で病院通いの日々を送るローラ(ローラ・ベンソン)には、人に触れられることに拒否反応を示す精神的障害があった。ある日、彼女は病院で、患者同士がカウンセリングを行う一風変わった療法を見かける。そこでは無毛症のトーマス(トーマス・レマルキス)をはじめ、さまざまな症状の人々が互いの体に触れ合っていた。
アディナ・ピンティリエ監督の初長編作で、第68回ベルリン国際映画祭においてコンペティション部門最高賞の金熊賞に輝いた。
冒頭は修正のない生の身体性や異形の人を観ることへの違和感 、衝撃や畏れ…、率直に言えば或る種の不快感を抱くかもしれない。静謐で透明感に溢れた映像ながら、本作が醸す印象濃度は強烈だ。
人と人との触れ合い、親密さを主題とした監督デビュー作が金熊賞(最高賞)と最優秀新人作品賞をW受賞した2018年のベルリン国際映画祭時、アディナ・ピンティリエ監督は翌年末から始まる真逆の世界新常識”ディスタンス”を想像し得ただろうか?
新型コロナウイルスの時代の渦中から本作を観ると、人々が無防備に晒す身体性、積極的に触れ合う密度、親密性に憧憬を覚えてしまう。
本作に登場する重度障害者、無毛症のアイスランド人、トランスジェンダーであり性カウンセリングも行う男娼、病院の患者たち、秘密クラブに集う人々…。何れも触れ合うことに癒しを求めている。性を通そうと治療であろうと、”接触は是”だと伝える。触れられることに拒否反応を示す主役ローラを除いては…。
そのローラも次第に叫び、感情を吐露し、身体性を晒して踊る姿には既にカウンセリングは必要ないように思えてくる。”自己解放”は本作に於ける一つの解答なのだろう。(幸)
2018年製作/125分/R18+/ルーマニア・ドイツ・チェコ・ブルガリア・フランス合作/ ビスタサイズ/5.1ch / DCP
配給:ニコニコフィルム
公式サイト:http://tmn-movie.com/
「仮設の映画館」にて先行オンライン配信中
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