監督:前田悠希
脚本:渡辺あや
出演:須藤蓮(キューピー)、三村和敬(マサラ)、岡山天音(志村)、中崎敏(三船)、若葉竜也(ドレッド)、成海璃子(三船香)
京都の片隅に100年以上の歴史を持つちょっと変わった学生寮“近衛寮”がある。学生たちによる自治会で運営され、無秩序のようでいて長年蓄積された秩序が厳然と存在している。「変人」または「個性あふれる」寮生たちのユートピアが“近衛寮”だ。大学側から老朽化による「建て替え」の計画が提示された。寮生たちは補修しながら現在の建物を残したい。議論は平行線のまま、ある日、学生課に両者の間を隔てる”壁”が出現した。
“京都発地域ドラマ”として2018年に放送されたNHKドラマ「ワンダーウォール」の劇場版。SNSなどで大きな反響を呼び、写真集が作られて展示したり、トークショーが開かれたりしたそうです。モデルは明確にはなっていませんが、長く同じ建て替え&存続議論を続けてきた京都大学の吉田寮、と京都の方はすぐ思い浮かべるでしょう。知人の息子さんがこの寮生だったことがあり、建て替え問題もちょっと気にしていたのでした。劇場版はテレビの未公開カットを加えたディレクターズカット版となります。
渡辺あやさんは綿密に取材のうえ脚本を書き上げたようです。そして美術さんが作り上げた寮は、秘密基地か梁山泊もかくやというような、濃密なワンダーランドです。学生さんたちがたくさん参加していて、その再現度に驚いたそうですよ。
冒頭にアメリカ大統領が”壁”を作る!というスピーチ映像が流れます。ベルリンの壁を壊す映像もあり、のちに学内にも”壁”ができます。なんの隔たりもないのが、この近衛寮(敬語禁止、トイレはジェンダーフリー、自治会の決定は全員一致など)。住みやすさはそこから来ているのでしょう。登場する寮生ひとりひとりがまるで漫画キャラのように個性的、しかもこの近衛寮を大切に思う気持ちが切なくて、青春ただ中の人も遠く離れた人も胸キュンです。成海璃子さん凛として素敵、その台詞に頷けました。若葉竜也さん…絶句。
高校生の時、学校の近所に下宿していた男子が一人いて、あっというまにオアシス化してしまいました。きっと同じような場所だったのでしょう。クラス会のたびに思い出話で盛り上がります。(白)
2019年/日本/カラー/68分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)NHK
https://wonderwall-movie.com/
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