2020年09月05日
れいわ一揆
監督・撮影:原一男
製作・撮影:島野千尋
出演:安冨歩、山本太郎ほか
東京大学東洋文化研究所新世代アジア研究部門の安冨歩教授は、最も自然に生きられるとして、女性の服を着る女性装を実践する。彼は、山本太郎が代表を務める「れいわ新選組」から参議院選挙に出馬することを決意し、「子供を守ろう」をスローガンに全国各地を回る。
昭和・平成を通じてドキュメンタリー映画を撮り続けてきた原一男監督。『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』、『さようならCP』、『極私的エロス 恋歌1974』、『ニッポン国VS泉南石綿村』などなど、一連の作品は常に時代を反映し、ドキュメンタリー史上に残る傑作・問題作といえる。今回、原監督の作品群に加わる新作は、”選挙エンターテインメント”とでも呼ぶべき異色作。2019年の参議院選挙で注目を集めた「れいわ新選組」の候補者たちを追ったドキュメントである。これまでにも過激な登場人物を扱ってきた原監督だが、今回は、とりわけ強烈な個性を放つ候補者たちが10人いる。
何がどう動くか分からない。手練れの原監督もさぞ苦労したのでは…と思いきや、「楽しかった!」そうなのだ。何年もかけてじっくりと対象を追うのが原監督の撮影スタイルというイメージがあるが、今回は短期決戦。
予期せぬ出来事の連続に、『ゆきゆきて、神軍』よろしく場内は爆笑の連続!拍手喝采が起こるほど沸き立った映画は久しぶりである。もちろん原監督は笑わせようと創作しているのではない。候補者たちの発言、行動、周囲の化学反応が笑いの渦を巻き起こしていく。
本作は、れいわ新選組のPR 映画ではない。それでも、これほどまでに面白く興味深い対象を目の辺りにしたら、編集にも工夫を凝らしたくなるのは分かる。安倍政権批判のイメージを分かりやすくイラスト動画にしてみたり…。切れ味の良いテンポや、見るもの全てを逃すまいとするカメラ。スタッフワークの奮闘ぶりが、”エンタメ性”を際立たせている。どこがどう面白いのかは観てのお楽しみ。
今年、必見のドキュメンタリーをお見逃しなく!(幸)
実を言うと、私が「れいわ新選組」の名前を知ったのは選挙開票当日。それまで全然知らなかったし、「れいわ新選組」という名前を聞いて「なんだろうこの党名」という思いがあった。なぜなら、私は「天皇制は差別の元凶」と考え、「天皇制の象徴としての元号」を50年以上、ほとんど使ってこなかった。勤めた会社でも西暦を使っていたので、使うのはお役所の書類などだった。「新撰組」を好きでなかったので、よけい「れいわ新選組」という名前は「胡散臭い」と思った。
それに、この主人公である東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授は「もっとも自然に生きる事ができる」スタイルとして、女性服を着る「女性装」を実践しているという。一方、私はこの「女性装」の代表例となる、「スカート、ハイヒール、化粧」は、女性の活動範囲を狭めたり、女らしさの押し付けとして、社会に出た時から避ける生活をしてきた。なので「女性装が最も自然に生きられる」なんて考え方には全然同調できなかったので、この映画を観始めた時にはどうなるだろうと思ったけど、「れいわ新選組」の他の候補が出てからはがぜん面白くなった。ユニークな候補者たち。いろいろな社会背景、問題意識をもった候補者たちの主張が魅力的だった。その中でも心動かされたのはシングルマザーの渡辺てる子さん。彼女の訴えていたシングルマザーの苦しい家庭を訴える演説がだんだんエスカレートしていく姿、演説がうまくなっていく様に感動した。
私は長い間の選挙経験から、選挙そのものに期待していなかったし、信用もしていなかった。私が投票した人で当選した人がほとんどいなかったから。それでも選挙にはだいたい行っていた。でも自分が投票した人が当選しないというむなしさは選挙に魅力を感じないと思わせるには十分。きっとそういう人がたくさんいるから投票率も高くないのだろう。一人か二人しか当選者がいないという、この小選挙区の選挙制度は少数意見が反映されないのでおかしいと思う。いつのまにかそういう選挙制度になっていた。
でもこの参議院選挙で「れいわ新選組」から二人の当選者(舩後靖彦と木村英子)が出た。しかも当選した二人は重度の障害者だった。それには少し希望を持った。私は60歳でリタイアするまで障害者が作った会社(障害者、高齢者のためのリハビリ機器を扱う会社)に勤めていたし、今は私自身が障害者になってしまったので。
胡散臭い思いで観始めた『れいわ一揆』だったけど、やっぱり原監督が作るドキュメンタリーは面白い(暁)。
こちらでも『れいわ一揆』を紹介しています。
シネマジャーナルHP 映画祭報告
東京国際映画祭(2019)レポート 『れいわ一揆』紹介
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/472866751.html
2019年製作/248分/G/日本/DCP / 16:9
配給:風狂映画舎
(C) 風狂映画舎
公式サイト:http://docudocu.jp/reiwa/index.php
★20209月11日(金)よりアップリンク渋谷ほか全国公開★
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