2020年07月01日
WAVES/ウェイブス 原題:WAVES
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
作曲:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
フロリダで高校生活を送るレスリング部のタイラーはスター選手で、成績も良く、美人の恋人もいた。厳格な父親と多少の距離はあるが、満ち足りた毎日を過ごしていたある日、タイラーは肩を負傷してしまう。医師は大事な試合に出場することを許さず、さらに恋人の妊娠が発覚して順調だった人生が狂い始める。
『ルーム』『ムーンライト』『ミッドサマー』といった多くの秀作・話題作を放ってきたスタジオ「A24」発の新作だけに、脚本・監督のトレイ・エドワード・シュルツは自由な表現を極めている。脚本段階から31の楽曲と映像世界が脳内でシンクロし、車のエンジン音、波音、ほぼ全ての生活音までがシュルツ監督の中では構築済みだったのだろう。
映像構成も斬新だ。例えば、主人公が絶望する場面ではスクリーンの画角までが縮こまり、心象を描出する。細心のライティング、鮮やかな色彩感覚にも目を奪われる。
映像、楽曲センスともに新鮮さは感じさせるものの、二部構成の前半、高圧的・強権性を発動する父とプレッシャーに押し潰される息子の関係は、些か既視感があり、新鮮な題材とは言えない。
心惹かれたのは、前半から1年後、妹を主人公とした物語のほうだ。少女の内省にフランク・オーシャンの楽曲が寄り添う。
平静な高校生活を装いながら、兄の出来事は家族に影を落としている。塞いでいた少女の前に現れたのはルーカス・ヘッジズ扮する同級生。
「君は綺麗だね」
心を閉ざす少女には、自己肯定感を齎す言葉が必要だったのだ。素直に好意を寄せる誠実な少年をルーカス・ヘッジズが自然体で演じ、素晴らしい印象を残す。ルーカス・ヘッジズは既に多くの作品で主役・準主役を演じてきたのに、何故こうもメディア擦れした顔にならないのだろう。常に新味を保つ俳優としての力量は見事である。
後半、2人の俳優の存在により、映画がPVに陥る危険性を防いだと言えよう。(幸)
製作国/アメリカ/2019/ カラー/ビスタサイズ/135分
配給:ファントム・フィルム
(C) 2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
公式サイト:https://www.phantom-film.com/waves-movie/
★7月10日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開★
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