2020年03月03日

ジョン・F・ドノヴァンの死と生 原題:THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN

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監督・原案・脚本・編集:グザヴィエ・ドラン
脚本:ジェイコブ・ティアニー
音楽:ガブリエル・ヤレド
美術:コロンブ・ラビ
撮影:アンドレ・トュルパン
出演:キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、ジェイコブ・トレンブレイ、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツ、ジャレッド・キーソ、サラ・ガドン、マイケル・ガンボン

人気のテレビシリーズに出演し、瞬く間にスターになった俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が、29歳の若さで亡くなる。やがて謎に包まれた死の真相が、11歳の少年ルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)との間でひそかに交わされていた100通以上におよぶ手紙によって明らかになる。
今回”美しきグザヴィエ・ドラン”は監督に徹し、11歳の美少年と、29歳で夭逝した美しき俳優の書簡物語が主軸である。ドランが子どもの頃、レオナルド・ディカプリオに手紙を書いた実体験を基に、着想から5年という年月をかけて熟成させた跡が分かる仕上がりだ。
ドランがこれまで繰り返し描いてきた“母と息子”のテーマが副旋律となっている。本作では2組の”母と息子”の関係性が物語を遡るに連れ、浮くボドノヴァンリになる。それは時に均衡であったり、対称的にも表現される。1対はジェイコブ・トレンブイとナタリー・ポートマン、もう1対はキット・ハリントン扮するドノヴァンとその母スーザン・サランドン。ステージママと反発する息子、アンニュイな母親像を絶妙なキャスティングで肉付けしている。“母と息子”の命題は今後のドラン作品でどのように変容していくか…永遠のテーマとして見守り続けたい。

尚、本作にゴシップライター役で出るはずだったジェシカ・チャステインの出演シーンが、ドランの判断により全面カットされた。ドラン自身は「チャステインの演技に問題があるわけではない」とコメントし、チャステインもSNSで「了承済み」である旨を報告している。チャステインの役柄も興味深いところ。DVD特典などに収録されていれば観てみたい。

物語には直接関連しないが、ドランはガス・ヴァン・サント監督作『マイ・プライベート・アイダホ』をこよなく愛しており、その一場面が故リヴァー・フェニックス、キアヌー・リーブスによく似た俳優により再現されている点もお見逃しなく。

ドランのグラマラスな映像と繊細な音楽のセンスの他、人気俳優がなぜ夭逝したのか?自殺か事故か、事件か?真相の鍵を握るのは一人の少年…といったサスペンス的興趣を唆る本作は、ドランファン以外も惹きつける魅力を放つ作品だ。(幸)


2018年製作/123分/PG12/カナダ・イギリス合作/シネマスコープ
提供・配給:ファントム・フィルム、松竹
(C) THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.
公式サイト:https://www.phantom-film.com/donovan/sp/
★3月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開★
posted by yukie at 14:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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