2020年03月01日
酔うと化け物になる父がつらい
監督:片桐健滋
原作:菊池真理子(秋田書店刊)
脚本:久馬歩、片桐健滋
撮影:一坪悠介
音楽:Soma Genda
主題歌・挿入歌:GOOD ON THE REEL
出演:松本穂香(田所サキ)、渋川清彦(田所トシフミ)、今泉佑唯(田所フミ)、恒松祐里(ジュン)、濱正悟(中村聡)、浜野謙太(木下)、ともさかりえ(田所サエコ)
田所サキは父トシフミ、母サエコ、妹のフミとの4人家族。ごく普通の家庭…と、ちょっと違うのは、父は酒飲みで母は宗教にハマっていること。父は朝出かけたときとは全く違う「化け物」になって夜中に帰ってくる。飲まなければ小心者で母に文句ひとつ言えない父なのに。
いやなのは休みでもおかまいなしに麻雀仲間がやってきて、一晩中飲んでうるさいこと。母は父に尽くし続けてついに限界がやってきたらしい。父の誕生日にいなくなってしまった。心を入れ替えたように見えた父だったが長くは続かず、またアルコールに溺れる日々が戻ってくる。そんな日常を忘れたくて、サキはマンガを描くことに没頭する。
ウェブ掲載で大評判になったコミックエッセイの映画化。書きようによってはもっと重い話になるのに、とても淡々としていて、それが逆に書き手の心のうちを伝えてきます。大変だった日々がいつかトゲではない思い出に変わりますように。
私は全く飲めず、酒席に出ることもありませんが、付き合いを避けられない人は辛いはず。お酒に弱い人が「無理でも飲まねばいけない状況」があったんだろうと想像します。弱いからあっさりタガも外れてしまうのでしょう。しわ寄せは家族に来ます。こんなに長い間助ける人がいなかったのか?!と思わず義憤にかられます。でも家庭の中のことを誰にでも話せないし、外からは見えにくいですよね。
ところどころ辛くて悲しくてそれなのにユーモアも漂っていて、最後は温かい涙が胸を満たしてくる物語。キャスティングがぴったりで(渋川さんは憎めない男の役がほんとに似合う)、苦労した両親に思いをはせ、2人の娘たちの幸せを祈りたくなりました。
こちらで原作第1話が読めます。(白)
会社に勤めていたころ、それこそ酔うと化け物になる人たちを数多く見てきました。
私の父はまったくお酒が飲めないので、最初はどう対処していいのか戸惑ったものです。化け方も人さまざまで、眠りこけてしまう人はまだ始末がいいのですが、やたら愚痴をいう人、女の人を触りまくる人、はたまた所かまわず脱いでしまう人など、ほんとに男って・・・と呆れたものです。家族は大変だなぁ~とも思いました。
お酒に弱いのに、飲むフリをして接待している人の姿もよく見てきました。飲めなくて、取引先との付き合いができないからリストラになったのかと悩む姿も切実でした。
本作は娘の目から見た酔っぱらいのお父さん。なんとも微笑ましくもありました。(咲)
まさか泣くとは思わなかった!題名からしてお気楽な喜劇かと思いきや、笑えもするけど感動が勝る展開…。先入観を自戒した。
テンポ&リズムとも滑り出しから終始快調そのもの。ギミックの使い方は感情の流れを阻害することがなく効果的。
主人公の独白は観客の共感を誘うにはもってこいだ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー製作の作品中、出色の佳篇と言えるのではないだろうか。
片桐健滋監督の快作。松本穂香×渋川清彦の名演が光る、拾いもの的名作と出逢えた喜びを味わえた。(幸)
2019年/日本/カラー/95分
配給:ファントム・フィルム
(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会
https://youbake.official-movie.com/
★2020年3月6日(金)ロードショー
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