2020年02月23日
娘は戦場で生まれた 英題:FOR SAMA
監督:ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ
出演:ワアド・アルカティーブ、サマ・アルカティーブ、ハムザ・アルカティーブほか
2012年3月、シリア、アレッポ。
マーケティングを学ぶ18歳の女子学生ワアドは、デモに参加したことをきっかけに、スマホで動画を撮りはじめる。アラブの春に触発され、民主化を求める平和的な運動だったが、やがてアサド政権をはじめ様々な勢力が台頭し、第二次世界大戦後、最大の人道危機とも言われる内戦状態になる。
そんな中、ワアドは医師を志す青年ハムザと出会い恋に落ちる。ハムザたちが設営した病院でプロポーズされ結婚。2016年1月1日、ワアドはパパの病院で娘を産み「サマ」と名付ける。アラビア語で空という意味だ。
ワアドは、サマのために、どんな街でサマを産み、どれだけ彼女を愛しているかを伝えるために動画を撮り続ける。だが、サマが生まれた時には、2016年がアレッポ陥落の年として記録されることになるとは思いもよらなかった・・・
アサド政権やロシア軍が、病院を爆撃するという蛮行を繰り返していることに憤りを感じます。地図に載っていない建物を探して、病院を設営しても、また破壊されてしまいます。人々の行き場がない絶望的な状況は想像を絶します。
ワアドがトルコに避難している義父のお見舞いに行った折、義父からサマを預るといわれるのですが、ワアドはアレッポにサマを連れ帰ります。例え、危険はあっても家族一緒にいたいという思い。
『アレッポ 最後の男たち』でも、トルコに逃れることもできるのに、アレッポに残って町を救おうと闘う人たちが描かれていました。故郷アレッポを愛する思いに涙です。
2016年12月にワアドが一家でアレッポから避難したとき、映像も無事持ち出し、アレッポの市民が蒙った生々しい様子をこうして世に出すことができたのです。
今はロンドンに住むワアド一家ですが、いつの日か故郷に帰りたいという思いは、やむをえず国を出た多くの人たちも同じでしょう。
美しい町並みは破壊されてしまいましたが、建築家になって町をなおすという少年や、燃えたバスに色を塗る子どもたちの姿に、人々が安心して暮らせる町が再建されることを願うばかりです。(咲)
泥沼化する戦地シリアで、戦争と人間を赤裸々に映しだした緊迫のドキュメンタリー
内戦の続くシリア、アレッポ。2012年から撮り始め、アレッポ陥落の2016年まで、この状況を撮影したのがこの映像。本当の戦争状態の記録である。ジャーナリストを目指す女学生ワアド・アルカティーブは、アサド独裁政権反対デモへの参加をきっかけにスマホでの撮影を始めた。しかし、平和を願う人々の思いはかなわず、内戦は激化するばかり。美しかった都市は破壊されていった。
そんな中でワアドは、医師を目指し仲間たちと廃墟の中に病院を設けたハムザと出会い結婚。女の子が生まれ、自由と平和への願いを込めて、アラビアで「空」を意味する「サマ」と名付けた。サマはこんな状況の中でも無邪気。それがいっそう涙を誘う。
幸せもつかの間、独裁政権側の攻撃は激しさを増し、ハムザたちの病院は街で最後の医療機関となってしまった。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人々の生きた証を映像として残すことを心に誓い撮影を続けた。これは、若き母親ワアドの目を通して記録された戦争の現実。
脱出成功したワアドが、無差別空爆で無残に失われていく命、祖国を愛する人々の悲しみを死と隣り合わせの中でとらえた映像は、世界中を驚愕させた。ワアドは「私にとってこれは、私の人生そのもの。母親のワアド、活動家のワアド、市民ジャーナリストのワアド、そして映画監督のワアド。これらすべての私が物語を具体化し導いてくれました」と語っている(暁)。
☆シアター・イメージフォーラムでは、初日2月29日(土)14:35の回上映後、ワアド・アルカティーブ監督と、夫のハムザ医師がスカイプで登壇しQ&Aを開催
2019年/イギリス、シリア/アラビア語/100分
日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:ナジーブ・エルカシュ
© Channel 4 Television Corporation MMXIX
配給:トランスフォーマー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/forsama/
★2020年2月29日(土)よりシアターイメージフォーラムほか全国順次公開
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