2020年02月10日
ミッドサマー 原題:MIDSOMMAR
脚本・監督:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ヴョルン・アンドレセン
思いがけない事故で家族を亡くした大学生のダニー(フローレンス・ピュー)は、人里離れた土地で90年に1度行われる祝祭に参加するため、恋人や友人ら5人でスウェーデンに行く。太陽が沈まない村では色とりどりの花が咲き誇り、明るく歌い踊る村人たちはとても親切でまるで楽園のように見えた。
『ヘレディタリー 継承』で圧倒的な力量を見せつけた若き異才アリ・アスター監督が、前作を超える今年一番の衝撃作を差し出した!
芸術的先鋭性を帯び、単なる冒険譚の域を凌駕したスケール感を備えた本作をジャンル分けすることは避けねばなるまい。今まで見たことのない世界観が提示されているのだ。
主訴はシャーマニズムである。入口は分かりやすい。スウェーデンの村で開かれる夏至祭(ミッドサマー)を舞台とし、90年に一度の祝祭が催される。一日中太陽が沈まない白夜が続く中、米国から文化人類学を学ぶ学生たちを案内人に、アスター監督は観客を儀式の只中へと誘う。
集う人々は金髪碧眼のスカンジナビア系美男美女。白い衣裳に色鮮やかな花々を纏う姿は、さながらフラワーチルドレンのような趣きだ。アスター監督が意図して選んだのか、彼らは眼の光に”文明の色”がない。プリミティブでメディア擦れしていない顔立ちが特徴の信者たち。
眩い光の下、胸踊る祝祭が次第に不穏な空気を醸成し、驚愕の事態に進む流れには澱みがない。あらためてアスターの精緻さが際立つ構成、トリッキーな編集の妙に感嘆する。
なぜ「村や祝祭の内容を口外することは禁じられている」のか?
キリスト教伝来以前より村に伝わる宗教儀式、民間伝承について、現代人の価値観から是非を問うことは出来ない。
木下惠介、今村昌平両監督の『楢山節考』を想起させる場面があった。予感的中!アスターは今村昌平作『神々の深き欲望』を本作の参考にしたという。是非この3作品も同時に鑑賞することをお奨めしたい。
本作の魅力を語り尽くせないが、これだけは言わせてほしい。ヴィスコンティ作『ベニスに死す』の美少年ヴョルン・アンドレセンの出演場面を見逃さないで!(幸)
配給:ファントム・フィルム
アメリカ/ビスタサイズ/2019/147分/R15+
(C) 2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.phantom-film.com/midsommar/sp/
★2月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開★
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