2020年02月03日

影裏

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監督:大友啓史
脚本:澤井香織
音楽:大友良英
原作:「影裏」沼田真佑(文春文庫刊)
撮影:芦澤明子
出演 :綾野剛、筒井真理子、中村倫也、平埜生成、國村隼、永島瑛子、安田顕、松田龍平

会社員の今野(綾野剛)は岩手に転勤し、そこで同僚の日浅(松田龍平)と知り合う。一緒に飲みに行ったり、釣りに行ったりするなど、まるで遅い青春時代のような日々を過ごすうちに、今野は日浅に心を開いていく。だがある日、日浅は今野に何も告げずに突然退職し、その後しばらくしてまたフラリと姿を現す。

冒頭から綾野剛の毛穴が見える程のクローズアップや肢体の場面が続く。綾野剛、松田龍平の主演コンビだけではなく、出演者全員が容赦ないクローズアップに晒される。顔の表情の奥にある内心までをも映し出そうとするかのようだ。ソフトフォーカスレンズで安易に綺麗な映像を作るような意図は、今回の大友啓史演出には通用しない。

遅れてきた青春時代のように交流する綾野剛と松田龍平の楽しげな絡み場面ですら、不穏な空気を孕んでいる。それが次第に切なさを帯びて行き、終盤は思わぬ展開が待ち受ける…。

登場人物たちの顔、彼らを取り巻く環境の全てが卓越したカメラワークで”説明”される。地方都市・盛岡の古い倉庫、今野(綾野剛)の住む普通のアパートに漂うジャスミンの薫り、ビアズレー絵画、光る川面、夜の川、炎が照らす闇、魚たち、苔むした森、人々の祝祭などを映し出した芹澤明子の撮影は、脚本以上に作品世界を表現して見事という他はない。近年これほどの絶品な撮影技量にはお目にかかれない。

大友啓史監督は、原作が芥川賞を受賞する前から映画化を起草していたそうだ。盛岡の再生と記念碑となるべきアートを模索していた地元自治体との利害が上手く合致した。ロケ地の全面協力のもと、生まれた逸品である。漫画を原作としたのエンタテインメントを器用に撮る印象のあった大友啓史監督の新たな側面を観た思いだ。(幸)

配給:ソニー・ミュージックエンタテインメント
配給協力:アニプレックス
カラー/製作国日本/ 134分
(C)2020「影裏」製作委員会
公式サイト:https://eiri-movie.com/
★2020年2月14日(金)より全国ロードショー★
posted by yukie at 13:07| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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