2020年02月03日

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 英題:JEREMIAH TERMINATOR LEROY

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監督・脚本・製作総指揮:ジャスティン・ケリー
原作・脚本・製作総指揮:サヴァンナ・クヌープ
出演:クリステン・スチュワート、ローラ・ダーン、ジム・スタージェス、コートニー・ラヴ、ダイアン・クルーガー

2000年代半ばのサンフランシスコ。親元を離れたサヴァンナは、兄のパートナーで作家のローラと出会う。ローラは自分の小説をJ・T・リロイという架空の美少年名義で出版、ベストセラーになっていた。そんなローラに頼まれ、最初は遊び半分で男装し、J・Tに扮するサヴァンナ。
やがて小説の映画化が決まり、ハリウッドやカンヌで大勢の観衆の前に出るうちに、J・Tとして出会った相手に本気で恋してしまうが……。

浅薄にも当時の西海岸でこのような事実があったことを知らなかったため、試写を観た際は衝撃だった。50ドルで雇った少女に架空の美少年作家の扮装をさせる…。軽い気持ちで始まった試みが、瞬く間に当事者たちの想像を超える存在、アイコン化して行く恐ろしさ。
本作には編集者の存在が薄い(というか登場しない)のが不自然だが、実際には出版社が「この小説は絶対売れる」と確信して売り出し、まさかJTリロイが偽物とは露知らず、カンヌ国際映画祭にまで足を運んだという逸話も聞いた。虚構の世界を支配する気はなくても、周囲が勝手に拡散してくれる世の中なのだ。

流行りものに安易に寄りかかる軽佻浮薄なハリウッドの実態もリアルに描かれる。夜ごと繰り広げられる華やかなパーティ、豪奢な邸宅、ドラッグの誘惑。人々は利害でしか動かない。稀代の美少年作家を利用するために近づいてくるセレブたち。中でも圧倒的に光っていたのはJTリロイと関係を持つ女優役のダイアン・クルーガー。美しさと冷酷非情な重層的役柄を見事に造形し、JTリロイを巧みに操作して翻弄させるファム・ファタールは、本作の虚構を象徴するような存在だ。
クリステン・スチュワートの少年役、作者のローラ・ダーンとも好演だが、ダイアン・クルーガーの色艶と技量が映画に説得力を与えていた。

監督のジャスティン・ケリーは日本公開作が少なく、ジェームズ・フランコと組んだ作品が多い。ハリウッドの内実を知っている上、人を喰ったような作風が、虚構の題材に刺激を受けたのだろう。作中、「裸の王様」の話が引用される。ちょっとした信憑性、神話性を示せばメディアは飛びつき、大衆は騙せてしまう現代の「教訓話」と観客は受け取るのではないか。(幸)

配給:ポニーキャニオン
製作国アメリカ/カラー/シネマスコープ/5.1ch/108分/PG12
(C) 2018 Mars Town Film Limited
公式サイト:http://jtleroy-movie.jp
★2月14日(金)より、シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開★
posted by yukie at 12:57| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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