2020年1月24日公開 シネスイッチ銀座ほか 劇場情報
監督・脚本:サイモン・ハンター
脚本:エリザベス・オハローラン
撮影:オーガスト・ジェイコブソン
美術:クリス・リッチモンド
衣装:ジョージナ・ネイピア
音楽:デビー・ワイズマン
キャスト
シーラ・ハンコック
ケビン・ガスリー
ウェンディ・モーガン
エイミー・マンソン
ポール・ブラニガン
2017年製作/102分/G/イギリス
配給:アットエンタテインメント
公式HP
いつだって手遅れなんてことはない
30年間夫の介護に人生を捧げてきた83歳のイーディ。やっと解放され、これから自分のために時間を使おうと思ったのに娘からは老人ホームへの入居を勧められ、人生の終わりを感じていた。そんな時、町のフィッシュアンドチップスの店で「追加の注文をしても良い?」と聞いたイーディに、「何も遅すぎることはないさ」と店員が答えた。その言葉に勇気を得たイーディは、かつて父が手紙で一緒に登ろうと行ってきていたスコットランドのスイルベン山に行ってみようと思いたち、夜行列車に乗りロンドンからスコットランドへ。
駅で鉢合わせして、偶然知り合っった地元の登山用品店の青年ジョニーをトレーナーとして雇い、山頂へ登る訓練を始める。イーディはこれまでの生活のせいかかたくなな態度で、何かを受け入れたり、頼ったりということができない。そんな態度が災いし、最初はジョニーとぶつかるが、ジョニーの丁寧な指導を受け入れていく。登山道の歩き方、登山グッズの使い方、地図の見方を教わり、ルートのとり方などを学んでいく。準備を整えたイーディはついにスイルベン山へ向かうのだが…。
83歳のイーディを演じるのは、撮影時イーディと同じ83歳だったシーラ・ハンコック。実際に山に登り過酷な撮影に挑んだという。またスイルベン山頂からの息をのむほど雄大で迫力ある景色もすばらしい。一歩踏み出せば人生は豊かになると勇気づけられる作品。
そんなに仲が良かったわけではなかった夫が病気になり、介護が必要な生活になってしまい、それから30年という長い間の介護生活。そこからやっと解放されて、これから自分のやりたいことができると思ったもののすでに83歳。やれることは限られている。そんな中からどう考えても無理だろうと思う登山をしてみようと思うイーディ。若い頃、父親からスイルベン山に一緒に行こうという葉書が届いて、そのことを思い出したからだった。老人ホームに入れようとする娘の様子を見て、その前に行っておかなくてはと列車に乗ってでかけてしまう。実行してしまえばこちらのもの。イギリスを南から北へ、かなり長い旅。それにしても若い頃に登山をしていたわけではなく、せいぜいキャンプぐらいしか経験がないのに山へ行こうというのは、かなり無謀な選択だともいえる。
私は20歳から約25年くらい登山が趣味で、あちこちの山に行っていたけど、その後映画にはまって、結局、映画を取り、山には登らなくなってしまった。車で行って山を眺めたりはしているけど、登山らしきことはもう15年くらいしていない。5年前には心臓手術をして、その後は荷物を背負って歩くことはほとんどしていない。そして駅の階段でさえ上るのがきつい状態。
83歳といえば、よほど訓練を続けた人でなければきっと同じような状態じゃないかと思うけど、それでもお父さんが「一緒に行こう」と行っていた山に行こうと思う気持ち。なんだか意地のような気もする。ジョニーと何日か訓練したものの、いざ山に登るという時に一人でいくと言い出したことがその表れだと思った。ジョニーは山の経験がほとんどない老人を一人で送り出したけど、登山をしていた者からすれば、経験の少ない老人を一人で山に送り出すなんて考えられない。日本とイギリスでは考え方が違うのかもしれないけど。それでも高尾山程度の山ならわかるけど、スイルベン山はテントで一泊しないと登れない山だし、人がほとんどいない。そんな中をイーディは一人で歩き続けて山頂を目指す。
まわりに人がいなくて、たった一人でテントで眠るというのは、けっこう怖い経験。この作品の中で動物が移動していくシーンが描かれていたけど、イーディは動物の鳴き声にまんじりともしない。私も山の中でたった一人でテントを張って寝たとき、回りに何か音がするたびヒヤヒヤした経験がある。そして次の日は雨にも降られ、強い風にテントは飛んでいってしまった。そんな中を登っていったわけだけど、そんな経験をしたからか、ジョニーが助っ人に来てくれた時のイーディの笑顔が素敵だった。人の親切を素直に受け入れられるイーディの姿がそこにあった。そして山頂からの景色の素晴らしさ。それにしても大きな山を登ったんだな、よく登頂できたなとほっとした(暁)。
30年続いた夫の介護が終わり、いよいよ自由な日々と思いきや、娘が施設入居の手続きを進める。私の人生、こんなはずじゃなかったと、かつて父親と登る約束をしたスコットランドの山に登ることにしたのだが。。。
人との関わり方が下手で意固地な態度ばかり取ってしまうイーディが若者に登山のイロハを学び、助けを受け入れていくようになっていく。それにつれてイーディの表情が柔らぎ、笑顔が増えていく。
自分一人でがんばらず、助けを借りることも大事。子育てや介護のときにそれに気づいていれば、ここまで不満を抱え込むことはなかっただろう。しかし、ここにきてやっとそれに気づく。人生、遅すぎることはないというのは生き方にも当てはまるのだと伝わってきた。
しかし、まったくの初心者がいきなりハイレベルな登山に挑むのは問題があると思う。これを見て真似する人が出て、イーディのようなラッキーに恵まれなかったら大変なことになる。その辺りをもう少し触れてくれるといいのにと心配になった。(堀)
2020年01月18日
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