監督・脚本・編集:近浦啓
主題歌:テレサ・テン「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」(ユニバーサル ミュージック/USMジャパン)
出演:ルー・ユーライ、藤竜也、赤坂沙世、松本紀保、バオ・リンユ、シェ・リ、ヨン・ジョン、塚原大助、浜谷康幸、石田佳央、堺小春 / 占部房子
技能実習生として中国から来日した青年チェン・リャン。劣悪な職場環境から逃げ出し不法滞在者となってしまった彼は、他人名義のパスポートを携え、山形のとある町にたどり着く。縁あって蕎麦屋で働き始めた彼は、無口な蕎麦屋の主人・弘から蕎麦打ちを教わる。厳しい中にも温かさを感じ、弘を父のように慕い始めるチェン・リャン。弘もまた、息子との関係がうまくいってなくて、チェン・リャンに情を深めていく。出前先で中国留学を予定している女性・中西葉月と知り合い、デートするようにもなる。そんなある日、チェン・リャンを追う警察が訪ねてくる・・・
技能実習生という名目で、国からの補助金も得て、外国人を体よく低賃金で働かせる事業主もいれば、不法滞在者とわかっていても背に腹は代えられず低賃金で雇う事業主もいます。私の知り合いのイラン人にも、1990年代に日本にやってきて、日本語もわからないのに雇ってもらって、雇い主に感謝していた人たちが大勢います。見つかれば雇い主も罪に問われると知りながら不法滞在者を雇うのは、低賃金で雇えるからという理由だったとしても、心を通わせるケースは多々あると思います。
本作は、大仰に社会問題を取り上げたものではなく、人と人との間に生まれる情を静かに伝えてくれる物語。チェン・リャンを演じたルー・ユーライは、不法滞在者となってしまった青年の複雑な気持ちを目から感じさせてくれます。また、口数が少なくて、近寄りがたいけれど、人情味を背中から感じさせてくれる藤竜也さん。渋いです。
テレサ・テンの「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」が懐かしく響きます。(咲)
技能実習生として来日したのに、最初に働いたところが劣悪な環境で逃げ出し、不法滞在者になってしまったチェン・リャン。他人になりすまし、山形、大石田の蕎麦屋で住み込みで働くことに。この店の店主は、無口で一見近寄りがたいけど、優しくもあり、ここで働くことに少し安らぎも感じていた。蕎麦屋での生活に慣れていっていたのに、その生活は長続きしなかった。その後が、最後どうなっていったのか、観終わったあと、今も気になる。
店主を演じていたのが藤竜也さん。蕎麦を打つ姿も本物ぽい。相当訓練したのだろうなと思った。それにこういう役がよく似合う。蕎麦屋での生活に慣れていっていたのに、その生活は長続きしなかった。その後が、最後どうなっていったのか、観終わったあと、今も気になる。
チェン・リャンを演じたルー・ユーライさんの、不安を抱えながら安らぎも感じるような演技は、こういう事情を抱えた人たちの姿を表していた。ルー・ユーライさんは『孔雀 -我が家の風景-』2005年(クー・チャンウェイ監督)に出ていたという。(暁)
*『孔雀 -我が家の風景-』は、クー・チャンウェイ監督にインタビューし、シネマジャーナル69号(2006年冬号)の表紙にもなった作品で、ルー・ユーライさんは主人公の姉役チャン・チンチューさんの弟役をしていた。
2018年 第19回東京フィルメックス コンペティション部門観客賞受賞
2018年/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/116分
配給:クロックワークス
©2018 CREATPS / Mystigri Pictures
公式サイト:https://complicity.movie/
★2020年1月17日 (金)より新宿武蔵野館にてロードショー
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