監督・脚本:竹葉リサ、エルラン・ヌルムハンベトフ
製作:市山尚三、木ノ内輝、キム・ユリア
撮影:監督アジズ・ジャンバキエフ
音楽:アクマラル・ジカエバ
出演:森山未來、サマル・イェスリャーモワ、マディ・メナイダロフ、ドゥリガ・アクモルダ
少年オルジャスは、カザフスタンの大草原にある小さな家で家族と暮らしていた。ある日、馬飼いの父が市場に出掛けたまま帰ってこなくなる。雷鳴が響きわたる中、警察に呼び出された母は、夫の死を知る。父を失ったオルジャスの前にカイラート(森山未來)という寡黙な男が現れ、乗馬などを通じて彼との距離を縮めていく。
森山未來の海外初主演作。カンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞したカザフスタン人女優サマル・エスリャーモバとダブル主演を務めたカザフスタン合作映画である。昨年、開催された第20回東京フィルメックスでコンペティション部門審査委員として来日したサマル(映画より若々しい!)は、森山未來を激賞していた。全編カザフ語であり、馬を易々と乗りこなし、スタッフとのコミュニケーションも全く問題なかったという。
カザフスタンの広大な草原、荒ぶる大地に自然と溶け込んだ森山未來の佇まいは驚異だ。森山を知らない外国人が観たら、おそらく素人と思うのではないか。それほどに森山の演技は俳優特有の”クサみ”が抜かれ、在りのままの自然体なのである。映画では森山演じるカイラートが、どこの何者かという特段の説明はない。森山の持つ”無国籍性”が見事に作用しているのだ。
父不在の中で母を支え、家事を切り盛りする少年オルジャスの姿が愛しい。発電機を作動したり湯を沸かしたり…。甲斐甲斐しくまだ幼い妹の世話も怠りない。
唯一の男手となったオルジャスの前に現れた寡黙な男カイラート。乗馬や仕事を教え、閉じていたオルジャスの世界を開放する。
米の名作『シェーン』を想起させる本作は、全編カザフスタンロケ。詩情豊かに描いた日本の竹葉リサ、エルラン・ヌルムハンベトフ(カザフスタン側)両監督の手腕は必見に値するだろう。(幸)
第32回東京国際映画祭で2019年10月30日にプレミア上映された折の竹葉リサ監督とエルラン・ヌルムハンベトフ監督のQ&A報告をこちらに掲載しています。
その中で、とくに面白いと思ったのが、竹葉リサ監督の下記の発言。
「日本人とカザフ人はアルタイ山脈から来た共通の民族と言われ、カザフのジョークにも近い話で、バイカル湖まで下りてきて、魚を求めて東に行ったのが日本人になって、肉を求めて南に行ったのがカザフ人になったという説があります。中国人は蒙古斑がないのに、カザフ人と日本人にはあります」
風貌も、こんな日本人いるという位よく似ている人がいるので、森山未來さんがカザフ人を演じても、ほんとに違和感がありません。比較的寡黙な役とはいえ、カザフ語の台詞をすべて自身でこなしているのも見事! (咲)
こちらは、母親役を務めたサマル・イェスリャーモワさんと、プロデューサーの一人である市山尚三さん。第20回東京フィルメックスの特別企画として、2019年11月27日に開かれたトークイベント「昨年度最優秀作品『アイカ』主演女優、サマル・イェスリャーモワに聞く。」の折に。(撮影:景山咲子)
2019年/日本・カザフスタン/カザフ語・ロシア語/81分/カラー/DCP/Dolby SRD(5.1ch)/シネスコ
配給:エイベックス・ピクチャーズ
配給協力:プレイタイム
カラー/DCP / Dolby SRD(5.1ch)/シネマスコープ/81分
©『オルジャスの白い馬』製作委員会
公式サイト:http://orjas.net/
★2020年1月18日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開★
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