2019年11月28日

幸福路のチー  原題:幸福路上 On Happiness Road

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監督・脚本:ソン・シンイン

声の出演:グイ・ルンメイ、ウェイ・ダーション
主題歌:「幸福路上/On Happiness Road」歌:ジョリン・ツァイ

アメリカで暮らすリン・スー・チー。祖母が亡くなったとの知らせを受け、台北郊外の幸福路の実家に帰ってくる。久しぶりの幸福路は、大きく変貌を遂げていた。
チーは、幸福路で過ごした日々を振り返る。
小学生の時に友達になった金髪で青い目のチャン・ベティや、腕白坊主のシュー・シェン・エン。3人は一緒に木登りしたり、屋根の上で歌ったり、毎日が冒険だった。しばらくして、ベティは引っ越してしまう。
やがて、大学受験。医者になってほしいという両親の期待を裏切って文系に進み、卒業後は新聞記者として働く。シェン・エンと再会するが、99年の大地震で彼は亡くなってしまう。チーはいとこを頼ってアメリカに渡り、そこで出会ったトニーと結婚。幸せな日々を送っていたけれど、故郷に帰ってきた今、離婚を考え始めている・・・

ソン・シンイン監督は、2008年、アメリカで通っていた映画学校コロンビア・カレッジ・シカゴで、先生から「自分の体験を書いてみなさい」と言われる。当時、流行っていたイランのマルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』に触発され、政治と社会情勢の変化の影響を受けた物語なら私にもあると綴ったのが本作。物語の半分に自身が投影されているという。
1974年生まれの監督は、蒋介石の教育政策で育ち、台湾語の使用を禁止され、「(台湾にいる)中国人」であるという意識を植え付けられた。
監督の祖母はアミ族。学校で原住民族は野蛮人と教えられ、祖母のことが嫌いだったそうだ。劇中の「チーには、アミ族の血が4分の1流れている」という言葉は、亡き祖母に伝えたいお詫びの気持ち。
少女の頃は、独裁政権下で多くの台湾人が政治犯として投獄された白色テロが続いていた時代。1987年に、38年にも及ぶ戒厳令がようやく解除され、その後は高度成長時代を迎える。

実写よりアニメーションで描こうと決めた監督は、台湾にアニメーション産業が育ってないことから、自身でスタジオを立ちあげている。
台湾の現代史を背景に一人の女性の成長を描いた、どこか懐かしい香りのするアニメーション。
高校の同級生に、当時台北市長に当選したばかりの陳水扁(後の台湾総統)の娘がいて、医学部志望でいかにもがり勉タイプなのに、「アンディ・ラウのドラマが好き」という場面があって、思わず笑ってしまった。監督のほんとの同級生のほんとの話? (咲)


東京アニメアワードフェスティバル2018 長編グランプリ
第55回電影金馬奨 最優秀アニメーション映画賞

2017年/台湾/111分/中国語/1.85:1
協力:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:http://onhappinessroad.net/
★2019年11月29日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開





posted by sakiko at 22:09| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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