2019年11月24日

読まれなかった小説  原題:Ahlat Agaci

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監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル、ムラト・ジェムジル、ベンヌ・ユルドゥルムラー、ハザール・エルグクル

海辺のチャナカレの町の大学を卒業して、山あいの故郷の村に帰ってきたシナン。作家になるのが夢で、父と同じ教師なら仕事をしながら書けるのではと目論んでいる。もうすぐ教師を引退する父は競馬に夢中で家も売り借金を抱えている。それなのに、祖父の土地で、井戸を掘り当てようと必死で、周りに呆れられている。
シナンは書き上げた小説「野生の梨の木」を出版したいと町長や本屋に打診するが、反応は芳しくない。出版費用に貯めていた金も、父親に持ち出される始末。
それでも、ようやく自費出版し、母に捧げる。
やがて兵役につくシナン。5ヵ月後に帰宅し、本屋に行くが1冊も売れてないといわれる。家に保管してあった山積みの本も濡れてしまっていた・・・

競馬に明け暮れ、家族を省みない父親に閉口しながらも、井戸掘りを手伝う息子。なかなか折り合わない父と息子だけれど、そこはやはり血の繋がった親子。しみじみとさせられる物語。
夢を持ち続けることの大切さや、口に出さなくてもお互いを思いやる心を教えてくれました。

シナンが大学に行っていたチャナカレの町は、イスタンブルとはマルマラ海をはさんだ向こうにあるダーダネルス海峡に面した町。出版への支援を打診した時に、「ガリポリの戦いや、トロイの話など、観光が絡めば」と言われます。第一次世界大戦の折、ムスタファ・ケマル(後のトルコ共和国初代大統領)が英仏軍を撃退したことで有名なガリポリ半島の向かいにある町。実は、私が1983年に初めてトルコを旅した時に、最初に泊まったのがチャナカレなのですが、その時には、かつて近くでそんな凄惨な戦いがあった場所だとは知りませんでした。
シナンの実家のある村は、トロイ遺跡に近いところ。でも、本作に出てきたチャナカレの町の中にあるトロイの木馬は、遺跡のそばにある木馬とは違って、ブラット・ピット主演『トロイ』(2004)で使われた映画の大道具。
町で有名な作家スレイマンと橋の上で言い争う場面があるのですが、そこからはチャナカレの町が見渡せます。
これまでのジェイラン監督の映画と同様、会話の一つ一つを聞き漏らせませんでした。(咲)

2018年/189分/G/トルコ・フランス・ドイツ・ブルガリア・マケドニア・ボスニア・スウェーデン・カタール合作
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/shousetsu/
★2019年11月29日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 15:43| Comment(0) | トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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