2019年11月07日
オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁 原題:Wings Over Everest(中国題:冰峰暴)
監督・脚本:ユー・フェイ プロデューサー:テレンス・チャン
撮影監督:ライ・イウファイ
美術監督:パク・イルヒョン チー・セバク
出演;役所広司 チャン・ジンチュー リン・ボーホン
声の出演:役所広司、沢城みゆき、宮野真守、神尾佑、山野井仁、俊藤光利、高木渉、細貝光司、沖原一生
ヒマラヤ地域の平和のため『ヒマラヤ公約』を締結する会議開催前、一機の飛行機がエベレスト南部、通称デスゾーンに墜落。その飛行機には、平和のカギを握る重要機密文書が載せられていた。墜落から3日後、ヒマラヤ救助隊「チーム・ウィングス」に、特別捜査官を自称する2人の男、ヴィクターとマーカスから、多額の報酬と共に機密文書を探す依頼が入る。チーム・ウィングスは“ヒマラヤの鬼”と呼ばれるジアン(役所広司)隊長中心に、エベレストで遭難した恋人を探し出すために入ったシャオタイズ(チャン・ジンチュー)、若く情熱を持ったヘリパイロット・ハン(リン・ボーホン)らが日々危険なミッションに臨んでいた。またジアンは無謀な行動の多いシャオタイズに亡くした娘の面影を重ねていく。危険なミッションと感じながらも、財政難に悩むチーム・ウィングスは依頼を引き受ける。
残された時間は48時間。酸素ボンベ残量も限られる中、死に至る場所・デスゾーンに向けて決死の登頂を始める。刻一刻と時間は過ぎ、様々な思いと世界規模の陰謀が絡まる中、世界最高峰の頂には、予想もつかない事態が待ち受けていた――。
世界最高峰のエベレストを登山者側から描いた作品は少なくない。本作は救助隊、それも機密文書回収という政治的な使命を帯びた山男&女たちが生命を賭す山岳アクションアドベンチャーという視点が目新しい。
日本・中国・インド・ヒマラヤ周辺国の思惑や陰謀が、標高8,848メートル上で飛び交う。むろん頂上で撮影された訳ではないけれど、高地でのロケは相当な迫力だ。極寒が襲い、落下、滑落、すれすれに空走するゴツいヘリコプターなどなど、ハラハラさせられる場面の連続だ。
ワイヤアクションで27時間(!)も吊るされ続け、身体中あざだらけになったという役所広司。生身を張った表現とアップでの眼力は緊張と慈愛を同時に映し出す。”陸”でのワンチームをまとめる温かな人柄は、国際派名優の境地を見せている。日本人としては、もっと役所広司が活躍する場面が観たかった〜。(幸)
ポスタービジュアルから雪山でのサスペンス・アクション映画と思われるかもしれないが、監督が描きたかったのは「愛がどこまでできるか」ということ。男女の愛だけでなく、親子の愛や仕事仲間を大事に思う気持ちも語られている。監督自身、登山や映画に対する愛が原動力になって、この作品を何年もかけて企画、脚本から作り上げた。
とはいえ、雪山での「もうダメなんじゃないか」と思うようなハラハラする場面はたっぷり。監督がモンブランやヒマラヤ山脈のマナスルを登頂し、その経験を脚本に落とし込んだという。
愛を感じつつ、エンタメ性も楽しめる作品に仕上がった。
ところで、この作品でヘリコプターが6000mまでしか上がれないという話が出てくる。なぜ頂上まで行けないのだろうと思ったら、標高が高くなると空気が薄くなり、プロペラを回しても風が起きないので飛べないからだと教えてもらった。なるほど!(堀)
かつて山女だった私は、山を舞台にした作品はいつも注目。だいたい山を登るためのドキュメンタリーがほとんど。でもこの作品は、エベレストを舞台にしたサスペンス・アクション。実際はエベレストの高所で撮影されたのではないとはいえ、こんな高所での撮影は、やはりかなり高度な撮影技術と登山技術が要求される。やはりカメラの技術革新、登山技術の進歩があってのことだろう。
ところでこの作品、役所広司主演ということで日本では宣伝されているが、やはり張 静初(チャン・ジンチュー)の大活躍がみどころ。非常に危険な登山シーンを演じている。でもここまでできるのは彼女だからこそと思い、やっぱりすごい身体能力を持ち、運動神経抜群と確信した。
私が彼女を初めて見たのは、2005年11月の第5回彩の国さいたま中国映画祭で上映された『花嫁大旋風』(日本公開題名『雲南の花嫁』、原題『花腰新娘』)だった。家の鴨居に逆さつり状態で登場。その状態から床に飛び降りるというまるで軽業師のような登場だった。実際はスタントマンが演じたのかと思ったら、本人とのことだった。それがあまり印象的だったので、今でも記憶に残っている。しかもそのあと獅子舞の先頭部分を演じるのだけど、これにしても相当な身体能力が必要だと思うので、この細い身体のどこにこんな力があるのだろうと思った。この作品のことがあったので、今回の彼女の山でのシーンは納得し、彼女のアクションは健在だと思った。
『雲南の花嫁』で彼女のことを知り、その後の出演作はかなり観てきた。アクションものも多いけど、2007年『プロテージ/偽りの絆』(原題『門徒』)での麻薬患者の役は迫真の演技だったし、第22回東京国際映画祭で上映されたアン・ホイ監督の『夜と霧』2009年(原題『天水圍的夜與霧』)での悲壮な演技も印象的。去年日本公開された『グレート・アドベンチャー』2017年 (俠盜聯盟)では流暢な英語を話し、単なるアクション女優ではない面も知った。今回、張 静初のことを書くに当たって、彼女の日本公開・上映作を調べてみたら10数本あった。意外に日本で公開されているのに知られていない。この作品でぜひ注目されてほしい(暁)。
東京国際映画祭 『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』 ワールドプレミアイベント(11/3)
提供:バップ/配給:アスミック・エース/
©Mirage Ltd.
2019/中国・日本/110分/PG-12
公式サイト:http://over-everest.asmik-ace.co.jp/
★11月15日(金)より全国公開★
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