2019年10月31日
永遠の門 ゴッホの見た未来 原題:At Eternity’s Gate
監督・脚本:ジュリアン・シュナーベル 『潜水服は蝶の夢を見る』
脚本:ジャン=クロード・カリエール『存在の耐えられない軽さ』
出演:ウィレム・デフォー 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、ルパート・フレンド『スターリンの葬送狂騒曲』、
マッツ・ミケルセン 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、オスカー・アイザック 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
マチュー・アマルリック『潜水服は蝶の夢を見る』、エマニュエル・セニエ 『潜水服は蝶の夢を見る』
人付き合いができないフィンセント・ファン・ゴッホ(ウィレム・デフォー)は、いつも孤独だった。唯一才能を認め合ったゴーギャンとの共同生活も、ゴッホの行動により破たんしてしまう。しかし、ゴッホは絵を描き続け、後に名画といわれる数々の作品を残す。
監督のジュリアン・シュナーベルは、画家でもあり、音楽も担う才人だ。シュナーベルの「作家性」を抜きに本作は存在しない。監督の首をすげ替えても産業として成り立つハリウッド式生産手段・ハリウッド的ドラマツルギーとは一線を画した映画だという点を自覚しつつ鑑賞に臨んだほうがいいかもしれない。
シュナーベルは、ゴッホの目に映った世界を想像し、ビジュアル面を構築している。カメラは枯芝を踏み歩くゴッホの脚を映し出す。ゴッホが見上げる大空を、眼前に広がる麦畑もゴッホの主観映像に成り切り、表出する。時折、レンズにアイリスを掛け、周囲を楕円形に縁取る”もやい”映像は印象的だ。『潜水服は蝶の夢を見る』で、片目の瞼しか自由に動かせなくなった主人公が見た世界を描いたのと同じ手法である。
「私は自分が見たままに描く。永遠が見えるのは私だけなのか」
と呟くゴッホ。自らが見た世界を伝えたい!例え誰にも理解されなくとも…。自然や静物、肖像画を見たままに描く孤高の人ゴッホ。
本作はシュナーベルの目を通して描かれる111分のゴッホの動く肖像画といえる。
シュナーベルとウィレム・デフォー自身が描くゴッホ絵画の模写も、絵の具の盛り上がり、色彩に至るまで、驚くほどのクオリティを示す。
人間ドラマとしての演出も奥行きに富む。オスカー・アイザック扮するゴーギャンとの交流・芸術論、人生を共有する弟テオ(ルパート・フレンドが温かい)、”黄色い家”を提供する宿屋の女将(ポランスキー夫人のエマニュエル・セニエ)、後世に残ることになった肖像画のモデル・医師ガシェ、ゴッホと対話する聖職者マッツ・ミケルセン。英米仏欧の名優たちが演じると、ゴッホが実在を帯びた人間に感じられてくる。この秋、必見の1作だろう。(幸)
配給:ギャガ、松竹
2018/イギリス・フランス・アメリカ/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/111分
© Walk Home Productions LLC 2018
公式サイト:https://gaga.ne.jp/gogh/
★11月8日(金)新宿ピカデリー他 全国順次ロードショー★
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