2019年10月27日
夕陽のあと
監督:越川道夫
脚本:嶋田うれ葉
音楽:宇波拓
企画・原案:舩橋敦
撮影監督:戸田義久
出演:貫地谷しほり(佐藤茜)、山田真帆(日野五月)、永井大(日野優一)、木内みどり(日野ミエ)、松原豊和(豊和)
鹿児島県最北端の長島町。佐藤茜は都会からやってきて食堂で働き、1年になる。明るく溌剌とした働きぶりで人気だが、自分のことを語ることはなく謎に包まれている。
島で生まれ育った日野五月(さつき)は、島に戻って家業を継いだ夫の優一、義母のミエ、里子の豊和(とわ)と平穏に暮らしている。五月は長い間不妊治療を続けてきたが断念し、7年前赤ちゃんだった豊和の里親となった。豊和には知らせず、7歳になった今まで我が子同様に暮らしてきた。ようやく生活が安定してきたので、特別養子縁組の申し立てを行うところだった。手続きは順調に進むと思えたが、豊和は東京のネットカフェに置き去りにされた乳児であり、その母親が佐藤茜であることがわかる。
養子縁組・特別養子縁組をするにはいくつもの条件があります。この映画の中でも児童相談所の職員たちのことばで説明されます。五月夫婦は特別養子縁組を望んでおり、子どもの年齢制限もありますが、早くから里子として養育されていた豊和はOKです。親権は実の親になかった(不適当と判断された)ことからスムーズにいくと思われていました。しかし、実の親が子どもを返してほしいと望んでいて…両方の母親の思いが交互に描かれていて、観ているほうもたまらない気持ちになります。子どもの豊和の幸せがどこにあるのか?もし、豊和に直接聞けたならなんと答えるでしょう?
子どもを取り巻く環境は厳しくて、これまで大人は何をやってきたんだ、と責められても言い訳する言葉がありません。孤立している誰かがいたら手を差し伸べられるだろうか?生きていく力と知恵を自分は持っているだろうか?わが身を振り返りました。(白)
不妊治療を諦め里子を預かった母。貧困から置き去りにした生母。愛する子どもと一緒に暮らしたい気持ちは同じだから対立する。
夕陽の実景に重なる母の悲しみ。自分で産んでいないことに負い目があるのか、里親の母は母親とはどうあるべきかを悩む。産むことよりもここまで慈しんで育ててきたことが全てだと認めてあげたい。
貧困が極まると助けを求めることさえできなくなるらしい。捨てるしか選べなかった生母のその後の人生を知ると生母を救う手立てはなかったのかと悔やまれる。親だってやり直せるはずだ。どちらの親に対しても切なさがこみ上げてきた。
子はやがて親から巣立つ。それまでの預かりものという姑の言葉が沁みた。(堀)
2019年/日本/カラー/シネスコ/133分
配給:コピアポア・フィルム
(C)2019 長島大陸映画実行委員会
http://yuhinoato.com/
★2019年11月8日(金)よりより新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!以降全国順次公開
☆越川監督インタビューはこちら。
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