2019年10月24日

人生、ただいま修行中 英題:Each and Every Moment

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監督・撮影・編集:ニコラ・フィリベール

フランス・パリ郊外の看護学校。年齢、性別、出身の異なる40人の学生にとって、採血や抜糸、ギプスを外すことなど全てが初めての体験だった。学生たちは、心臓病の病棟や末期ガン患者の緩和ケアを行うホスピスなどで実習を行い、悩みを抱えながらも一人前の看護師になるために日々奮闘する。

先ごろ11年ぶりに来日したドキュメンタリー映画の名手ニコラ・フィリベール監督。『ぼくの好きな先生』『パリ・ルーヴル美術館の秘密』など日本公開作は殆ど観ている筈だが、その都度、新鮮な驚きと感動に包まれる。
「本当にカメラがあるの?どうしてそんな自然に話せるの?!」
と驚嘆するほどの奇跡的な瞬間に出逢える喜び。今までの作品通り本作も、説明なし、ナレーションなし、音楽なし…、「ないない尽くし」の映画だ。観客は今、目の前で起こっている出来事のように、フィリベールが写し撮った世界を体感する。

本作が製作されたのは、フィリベールが救急救命室で命を救われたことがきっかけ。いくら世界的に名高い名匠だからとはいえ、カメラが医療現場に入り込むのは困難を極めただろう。許認可などの手続き的な労苦を全く感じさせないほど、フィリベールの眼差しは暖かい。

パリ郊外モントゥイユの看護学校で学び、実習する看護師の卵たち。手の洗い方、採血や血圧計の取扱いなど、基本のイロハをリラックスしながら吸収する学生、優しく指導する教師たちの様子に冒頭から頰が緩んでしまう。座学を経て実際の病院での実習場面にまたも驚く!仏の人々は何とユーモア精神に溢れているのだろう。心に余裕がある証拠だ。
カメラは実習生に身体を委ねる患者たちの戸惑う表情も漏れなく写し撮る。

終盤、1人1人の学生が実習や学び、将来像に向けて指導者へ語る場面は、その率直で誠実な語り口に涙腺が緩み、心から応援したくなる。医療関係者は割引で鑑賞できるとのこと。全ての人に観てほしい秀作だ。(幸)


配給:ロングライド 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
2018年/フランス/フランス語/105分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/
©️Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018
公式サイト:https://longride.jp/tadaima/
★11月1日(金)新宿武蔵野館他、全国順次公開★
posted by yukie at 12:21| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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