劇場公開 2019年 10月26日(土)渋谷ユーロスペース他 公開情報
監督・撮影・編集・朗読:吉峯美和
プロデューサー:中野理惠、吉峯美和
撮影:南幸男、小口久代
テーマ曲「新 パワフル ウィメンズ ブルース」(作詞:田中美津、曲・演奏:RIQUO)
出演:田中美津、米津知子、小泉らもん、古堅苗、上野千鶴子、伊藤比呂美、三澤典丈、安藤恭子、徳永理華、垣花譲二、ぐるーぷ「この子、は沖縄だ」の皆さん
日本のウーマン・リブ運動を牽引した田中美津さんを4年間に渡り追ったドキュメンタリー
1970年代初頭「女性解放」を唱えて始まった日本のウーマン・リブ運動を牽引した田中美津さんの歩んできた道、鍼灸師として働く姿、そして沖縄辺野古に通う彼女の今を4年に渡り追ったドキュメンタリー作品。
吉峯美和監督が初めて田中美津さんに会ったのは4年前。「日本人は何をめざしてきたのか 女たちは平等をめざす」という、2015年NHKで放送された、戦後70年の女性史のドキュメンタリー制作にフリーの映像ディレクターとして参加したのがきっかけだった。吉峯監督は、この番組制作で知り合った田中さんに惚れ込んだことが、本作の製作動機になっている。「戦後、活躍したいろいろな女性の方にお目にかかったのですが、田中美津さんはその中でも特別で、強く心に残りました」と田中美津さんに魅力を感じ、映画化を考えたそう。
1970年、田中さんがビラに書いた「便所からの解放」が多くの女性の共感を呼び、日本におけるウーマンリブ運動を牽引する形になり、ウーマンリブ運動のカリスマ的存在になった。昨今、話題になっている“Me Too運動”の先駆けともいえる。女性が「母性=母」か「性欲処理=便所」の二つのイメージに分断されているととなえ、その解放の呼びかけに「便所からの解放」という言葉が使われた。
日本でウーマンリブ運動が始まった1970年代当時は儒教などの影響で「女性は子供のときは父親や兄に従い、結婚したら夫に従い、年老いた後は子(息子)に従うのがよい」という考え方が根深く残っていて、「女性は男性のいうことを聞いていればよい」とか、「結婚したら女性は家庭に入り、家で家事と子育てに従事するのがよい」という考え方があたり前だった。しかし、田中さんの家では、そういう「女はこうでなくてはいけない」みたいは押し付けはされずに育ったという。
それが、田中さんの「自分の思いに忠実に生きる」「ありのままの自分でいい」「女性自身の思いを大切にして、他者からもそういう生き方が尊重されるべき」というような主張に結びついたのだろう。そして、多くの女性たちの共感を得た。今ではこういう考え方はあたり前になっているけど、当時はそういうことを言うと「女らしくない」「女らしく」などと釘をさされたりした。
女性解放は大事、私の解放はもっと大事。家では感じなかった生きがたさを社会からは感じ、「この星は、私の星じゃない」と嘆きながら、不器用にこの星に立ち続けてきた美津さん。リブのカリスマと言ったら、いかにも気が強そうなイメージがあるけど美津さんは違う。体も弱くそれが鍼灸師の道を選ばせたのかもしれない。居場所を求めて、メキシコ、鍼灸師、辺野古と、自分の思いに忠実に行動してきた美津さん。そんな美津さんの魅力にせまる。
「便所からの解放」とは、家庭、性産業、学生運動、社会運動など、社会の中で、男性の性欲処理の対象とされていた女性たち。自尊心を取り戻し、それらからの解放を訴えた彼女の「便所からの解放」は、当時、良くも悪くも時代を象徴する言葉だった。当時高校生だった私はメディアなどから悪意を持って伝えられる「便所からの解放」の言葉を見て「何を言っているの、この人たち」と、リブの人たちに反発を感じていた。しかし、その後リブの女たちと知り合い、直接話を聞いて納得したという経験がある。主婦と性産業で働く女性たちは、こういう男社会の意識の中で分断されていて、お互いを敵のように思っていたところもあった。そんな中で「自分の思いに忠実に生きる」ということを教えてくれたのがリブだった。(暁)
2019年/日本/90分/配給:パンドラ
公式サイト
2019年10月20日
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