2019年10月13日
駅までの道をおしえて
監督・脚色:橋本直樹
原作:伊集院静
撮影:蔦井孝洋
音楽:原摩利彦
主題歌・挿入歌:コトリンゴ
出演:新津ちせ(サヤカ)、笈田ヨシ(フセコウタロー)、有村架純(10年後のサヤカ/モノローグ)、坂井真紀(サヤカの母)、滝藤賢一(サヤカの父)、羽田美智子(サヤカの伯母)、マキタスポーツ(サヤカの伯父)、佐藤優太郎(コウイチロー)、柄本明(動物病院院長)、余貴美子(看護師長)、市毛良枝(サヤカの祖母)、塩見三省(サヤカの祖父)
8歳のサヤカは両親と愛犬のルーと海辺の町に住んでいる。ルーはサヤカが小さいころやっと飼うことを許してもらった大親友だ。毎日散歩に行き、約束通りちゃんと世話もしてきた。ところがサヤカが臨海学校で留守をした数日の間に、ルーは亡くなってしまう。お父さんにどんなに言い聞かされてもサヤカには受け入れることができない。ルーにまた会えると信じて散歩道を辿っていると、原っぱで犬と出会う。すぐに姿を消してしまった犬は、数日後古い喫茶店に繋がれてルースと呼ばれていた。マスターのフセ老人も、何十年も前に亡くなった息子の死を受け入れられずにいる人だった。大切なものを失っている二人は不思議な友情で結ばれる。
サヤカは学校では友達がいません。まっすぐ家に帰ってルーと遊ぶのが日課でした。その親友にお別れも言えないまま、旅立たれてしまったので受け入れられません。フセ老人は息子の死を理屈で理解しても情が拒否しています。
笈田ヨシさんはピーター・ブルックのドキュメンタリーで、そのワークショップのただ一人の日本人として覚えていましたが、86歳になられたとか、お元気です。ちせちゃんとは77歳差、同じ目線で柔らかくお話していました。
新津ちせちゃんの演じるサヤカがごく自然で、台詞と思えない独り言や、軽い足取りや笑顔に見とれます。最近はどこで誰と一緒に遊ぶのか、何時に帰るのか親に言ってから出かけるのだと思うのですが、サヤカはそんな様子もなく一人でどこへでも行きます。ファンタジー要素の多い作品なのに、親子の信頼関係がきちんとあるのね、と思わずリアルに考えてしまいました。動物と子どもが主人公という強力な布陣+見守る大人たち、ゆったりと流れていく時間に身をゆだねてください。(白)
駅といえば、電車。原作に赤い電車が象徴的に登場することから、2018年2月25日に創立120周年を迎えた京急電鉄がタイアップ。あちこちの場面で赤い京急の電車が通り過ぎていきます。横浜や横須賀に縁のある方には、きっと懐かしい風景が見られます。
原っぱの中にポツンとたたずむ駅は監督が作り上げたもの。これは現実なのか、夢なのか・・・。新津ちせちゃん演じるサヤカが不思議な世界に誘ってくれました。(咲)
「犬を飼いたい!」
主人公のサヤカが愛犬ルーとの別れを受け入れるまでを描いた作品だが、作品を見終わったとき、そう思う人が多いに違いない。ルーと駆けるサヤカの弾けんばかりの笑顔があまりにも楽しそうなのだ。仲の良い友達のいないサヤカがルーと出会い、四季折々の風景の中で絆を結んでいく。じゃれ合うサヤカとルーの間に演技を超えた信頼関係が感じられた。実はサヤカを演じた新津ちせがルーを自宅で預かり、撮影期間中、毎日の散歩や世話をしていたのだという。
大切な存在を失うのは辛い。しかし、出会えたことを喜び、次の一歩を歩いていく勇気をサヤカから受け取ってほしい。(堀)
2019年/日本/カラー/シネスコ/125分
配給:キュー・テック
(c)2019映画「駅までの道をおしえて」production committee
https://ekimadenomichi.com/
★2019年10月18日(金)より 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開
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