2019年09月21日
エセルとアーネスト ふたりの物語(原題:Ethel & Ernest)
監督:ロジャー・メインウッド
原作:レイモンド・ブリッグズ「エセルとアーネスト ふたりの物語」(バベルプレス刊)
音楽:カール・ディヴィス
エンディング曲:ポール・マッカートニー
出演:ブレンダ・ブレシン(エセル)、ジム・ブロードベント(アーネスト)、ルーク・トレッダウェイ(レイモンド・ブリッグズ)
「さむがりやのサンタ」「スノーマン」「風が吹くとき」などの絵本で日本でもよく知られているレイモンド・ブリッグス。彼の両親の思い出を描いた絵本を、味わいある手描きで忠実に再現したアニメーション。
1928年のロンドン。メイドとして働くエセルは、毎朝窓の下を通る牛乳配達人のアーネストと知り合い、二人は恋に落ちて2年後に結婚。アーネストは陽気で楽天的、エセルは生真面目で働き者、郊外のウィンブルドンパークに小さな家を買う。1934年、待望の一人息子レイモンドが生まれる。すくすくと成長したが戦争の影が近づいていた。疎開した息子からの便りを楽しみに戦火のロンドンで過ごす二人、1945年ようやく終戦の日が訪れた。レイモンドは希望校に進学しエセルは大喜びするが、青年期に入って美術の道に進むと言い出す。
世界的に有名な絵本作家のレイモンド・ブリッグズ。本人が机に向かっているシーン(実写)が登場します。少し背中を丸めて、拡大鏡を覗きながら両親の絵を描いています。机の周囲にあるペン立てや置物、壁のポスター…ファンは嬉しいですよね(私は大喜びでした。スノーマンのカップ&ソーサ―愛用中)。
映画は「普通の人だったパパとママ」が出会ってから亡くなるまでを丁寧に描いていきます。20世紀のほとんどを生きた普通の人の歴史が息づいています。戦争を生き延び、その後の復興と経済成長を体験します。次々と進化し生産された家電や乗用車を買うことを目標に、私の親たちも生きてきました。
3月の東京アニメアワードフェスティバルには、プロデューサーが来日し、『この世界の片隅で』の片渕須直監督とトークセッションがありました。ごく普通の人々の暮らしを描いた両作品も、世界中の片隅で生きた人たちの思いも、みなこのように似通っています。せっかく手に入れた平和を手放さないようにしたい、とあらためて思いました。(白)
「スノーマン」で知られる絵本作家レイモンド・ブリッグズが両親の出会い、結婚、家庭生活について描いた絵本を映画化。
ちょっと見栄っ張りでネガティブな母は息子の成長に一喜一憂する。そんな母を父は大らかに包み込む。夫婦の愛がじんわりと伝わってきた。
2人の夫婦生活に水洗式トイレ、ガス湯沸かし器、ラジオ、電話、冷蔵庫、テレビ、車など、文明の利器が少しずつ入り込む。イギリス庶民の生活史が見えた。
戦争が生活に落とした影は大きく、鉄製品が没収され、子供が疎開する。日本と同じだったと知り、改めて戦争は絶対にしてはならないと思う。(堀)
2016年/イギリス・ルクセンブルク合作/カラー/ヴィスタサイズ/94分
配給:チャイルド・フィルム、ムヴィオラ
(C)Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016
https://child-film.com/ethelandernest/
★2019年9月28日(土)岩波ホールほか全国順次公開
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