2019年09月21日
春画と日本人
監督・撮影・編集・製作著作:大墻敦
ナレーター:濱中博久
音楽:矢部優子・池田陽子・長谷川美鈴・長谷川武尚
出演;小林忠(国際浮世絵学会会長)、浅野秀剛(国際浮世絵学会理事長)、木下直之(東京大学文化資学研究室教授)、石上阿希(国際日本文化研究センター特任助教)、浦上満(永青文庫春画展実行委員、古美術商)ほか [肩書きは取材当時]
キネマ旬報ベストテン2018年文化映画第7位
日本初の大規模な春画展が、2015年9月、東京の小さな私立博物館「永青文庫」で開幕した。国内外で秘蔵されてきた貴重な春画約120点を一堂に集めて展示する画期的な試み。それまで年間2万人の来館者だった永青文庫に、3ヶ月の会期中に21万人が押し寄せた。女性来館者55%、5人に1人が図録を購入するという異例の記録を打ち立て、美術界の話題をさらった。
開催までの道のりは困難を極めた。当初は、ロンドンの大英博物館で成功を収めた「春画展」の日本巡回展として企画されたが、東京国立博物館をはじめ国内の公私立博物館20館へ打診しても不調に終わった。海外で美術品として高く評価されている春画の展示が、なぜお膝元の日本ではすんなりと成立せず、小規模な私立博物館での開催となったのか。なぜ21万人もの熱狂的な観覧者が訪れたのか。映画は、展覧会を成功に導いた人々とともに「春画と日本人」をめぐる謎に迫っていく。
なお、本作品は、「春画」のオリジナリティと、収集・保存・研究にかけてきた方たちの意図を尊重するよう、「春画」にぼかしやトリミングをかけることなく紹介しているため、18歳未満入場禁止となっている。
春画とは男女の交わりや色恋をのびやかに表現したもの。性器まで描いているものもある。葛飾北斎、喜多川歌麿、菱川師宣らの浮世絵師のほとんどが絵筆をとり、当時最高水準の「彫り・摺り」の技術を用いた傑作が多い。ピカソが葛飾北斎の春画を所有していたなど海外での評価は高い。
成功を収めた大英博物館での春画展の日本巡回展企画は紆余曲折を経て小規模な私立博物館で開催。しかし、21万人もの来館者を記録した。
なぜ日本では春画の展示がスムーズにいかないのか。警察の見解はどうなっているのか。慶應義塾の塾長(代理)を務めた高橋誠一郎は江戸時代の浮世絵の個人コレクターだった。主要なコレクションの大半は遺族から母校である慶應義塾に譲られ、現在、およそ千五百点を数える優れた浮世絵が慶應義塾図書館で保管されている。しかし、そこには高橋が集めた春画はない。それはなぜなのか。作品はいくつもの疑問を検証する。
関係者の証言から日本における春画の位置付けを紐解くことで、日本人の事勿れ主義が浮かび上がってきた。責任逃れ体質を改めて突き付けられた気がする。(堀)
この映画で、名作との誉れ高い春画を初めてよっく見ました。抑えた色、着物の柄、構図の斬新さ、隅々まで手を抜かない毛の一筋一筋、彫り・刷りの技術の高さ。その美しさに感心しました。永青文庫の春画展の入場者は女性55%と男性を上回ったそうです。描かれている男女が良い表情をしていて、生を謳歌している大らかな江戸人の姿が観られました。女性を責めたり傷つけたりの不快なものはありません。図書館にも春画の図がある本が並んでいますが、タイトルに「春画」と入った本を借りるのは女性にはちょっとハードルが高いでしょう。美術品として一級のこの作品たちを解説付きで観られます。ぜひ映画館へ足をお運びください。(白)
2018年/87分/カラー/16:9
配給:ヴィジュアルフォークロア
(C) 大墻敦
公式サイト:https://www.shungamovie.com/
★2019年9月28日(土) ポレポレ東中野にてロードショー
2019年秋 大阪・第七藝術劇場、京都シネマ、名古屋・シネマスコーレほか 順次全国公開
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