監督:森淳一
脚本:藤井清美 森淳一
出演:吉岡里帆、高杉真宙、大倉孝二、浅香航大、國村隼、渡辺大知、柳俊太郎、松田美由紀、田口トモロヲ
浜中なつめ(吉岡里帆)は警察学校の卒業式の夜、過失で弟を事故死させ、自分の視力も失う。警察官になることを諦めたなつめはある日、自動車事故の現場で少女が助けを求める声を聞く。誘拐事件を疑ったなつめは警察に訴えるが十分に捜査してもらえず、自ら動き出す。
まさか泣くとは思わなかった!骨太とはいえ、猟奇的なR15+指定のサスペンス・スリラーで‥。それほどまでに感情を揺さ振り続ける本作を撮ったのは、『重力ピエロ』『リトル・フォレスト』シリーズなどの森淳一監督。脚本は『るろうに剣心』シリーズ『ミュージアム』などの藤井清美と共同である。
説明を排した話法、中盤からラストまでクライマックスの連続という練られた構成に、小気味好いテンポで進行する。森監督は製作会社「ROBOT」所属だけに映像のセンスも優れており、きめ細かなディテールからワンカット長回しまで自在に操る。
時折、挟まれる視力を失っている主人公が「見ている世界」の可視化は見事だ。
森演出のテンポ・リズムが一瞬だけ落ちる場面がある。「タラタラしないで、とっとと進行すれば良いのに‥」とテンポ好き(?)映画ファンは少しイラッとしたのだが、それが後から重要な伏線だと気付いた時の感銘!「う〜ん‥、良く出来ている」と唸らざるを得なかった。
幾つかの挿話を通し、芯が強く勇気と母性を感じさせる主人公を渾身の演技で造形してみせる吉岡里帆。チャラい雰囲気を醸しながらも善良さ丸出しで主人公をサポートして行く高杉真宙。
猟奇繋がりで(?)デビッド・フィンチャー監督の『セブン』でいえばモーガン・フリーマン的な温かさを齎らす田口トモロヲ。バディコンビが絶妙な大倉孝二。主役から脇役まで全員の好演で魅せる映画は多くない。特に盲導犬の名演技にもご注目を!(幸)
見えないからこそわかることがある。一方で見ているようで見ていないことも。盲目の主人公が偶然、若い女性の拉致監禁事件に気がつき、同じ現場を目撃した高校生とともに犯人に迫る。微かな音、匂いで主人公がわかったことをうまく可視化してスクリーンに映し出す。主人公が犯人から追われたとき、高校生がスマホを使って遠隔サポートする方法は見事。2011年の韓国映画『ブラインド』のリメイクだが、韓国版にはない見せどころ。ただ、韓国版よりもかなりグロいシーンがあるので苦手な人は自衛が必要かもしれない。
なお、2015年には韓国版のアン・サンフン監督が再びメガホンをとり、中国でリメイクしている。中国では興行収入43億の大ヒットとなったので、3作品を観比べるのも面白いだろう。(堀)
(C) 2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C) MoonWatcher and N.E.W.
2019年製作/128分/R15+/日本/カラー
配給:東映
公式サイト:http://www.mienaimokugekisha.jp/
★9月20日より 、丸の内TOEIほか全国 公開
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