2019年08月29日

荒野の誓い 原題:HOSTILES

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監督・脚本・製作 スコット・クーパー
製作 ジョン・レッシャー、ケン・カオ
撮影監督 マサノブ・タカヤナギ
出演 クリスチャン・ベイル、ロザムンド・パイク、ウェス・ステューディ、ジェシー・プレモンス、ピーター・ミュラン、ティモシー・シャラメ

1892年、インディアン戦争の英雄で現在は刑務所の看守を務める騎兵大尉のジョー(クリスチャン・ベイル)は、かつての敵で余命わずかなシャイアン族の長イエロー・ホーク(ウェス・ステューディ)とその家族を居留地まで送る任務に就く。道中コマンチ族に家族を惨殺されたロザリー(ロザムンド・パイク)も加わり共に目的地を目指すが、襲撃が相次ぎイエロー・ホークと手を組まなければならなくなる。

母性で綴られる稀少な西部劇である。冒頭からロザムンド・パイク扮するヒロインが、娘たちを必死で守ろうとする懸命な母性愛、とっさに取った行動力、西部に生きる女特有の知恵に感情を強く揺さぶられた。物心ついた時から観てきた荒くれ男中心の西部劇とは性質を全く異にしている映画なのだ。

"荒野"の題名が示す通り、熱く乾いた大地、大気には砂埃が舞い、生物の生存を拒む過酷な道程の舞台設定に、母性の描出が柔らかさと艶やかな質感を齎している。米国ニューメキシコ州、アリゾナ州等で撮影されたという荒野の景色は、日本人撮影監督マサノブ・タカヤナギによるものだ。シネマスコープの雄大さを活かした映像は、映画ならではのスケール感に満ち、1892年の西部開拓地へと観客を引き込んで行く力を持つ。

産業革命後、西部が戦争から発展へと変遷して行く過程には、異人種間交流にも価値観の変化が齎されたのだろう。その点を視野に入れたことにより、本作は近代性、普遍性を得た。
クリスチャン・ベイルと再タッグを組んだスコット・クーパー監督は、ベイルに匹敵する存在感でネイティブ・アメリカン役のウェス・ステューディを対峙させた演出からも、人種感への目配りが分かる。
個人的には、ティモシー・シャラメとピーター・ミュランの出演場面をもっと観たかった。(幸)


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2017年製作/135分/G/アメリカシネマスコープ/ドルビーデジタル
配給/クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES/提供/東北新社
(C) 2017 YLK Distribution LLC. All rights reserved.
公式サイト http://kouyanochikai.com/
2019年9月6日より、新宿バルト9他、全国公開
posted by yukie at 11:03| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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