2019年08月15日
火口のふたり
監督:荒井晴彦
原作:白石一文
脚本:荒井晴彦
出演:柄本佑、瀧内公美
東日本大震災から7年目の夏、離婚し、再就職先も倒産してしまった永原賢治(柄本佑)は、かつて恋人だった佐藤直子(瀧内公美)の結婚式に出るため郷里の秋田に帰省する。久々に再会した賢治と直子は、ふとしたきっかけでかつてのようにお互いを求め合う。
漫画を原作とする砂糖菓子のような甘い恋愛映画が跋扈する中、珍しく性愛に身を窶す男女の物語。無修正映像ということもあり、より生々しく強い”身体性”を訴えかける映画だ。
象徴的な”火口”のモチーフ、ふたりの官能の日々が充満した一冊のアルバム、〝亡者踊り〟という幻想的な盆踊りの風景など、ビジュアル的要素は十分なのに、監督の荒井晴彦は脚本家出身のせいか、台詞で説明を加えようとする。狙った上での演出意図だろうか。
台詞や身体表現は達者なはずの柄本佑より、瀧内公美のほうが本作に限っては人物造形、心象描出ともに長けている気がする。覚悟を決めた女優は潔い。鋭い射抜くような眼差しに魅せられる。
下田逸郎の楽曲といい、全体的に昭和テイストな点も監督の狙いか。濡れ場シーンの多さに抵抗感を持つ女子は居そうだ。否が応でも身体に刻まれている記憶と、理性や規範意識の狭間で翻弄される抑制し難い欲求は、誰しも覚えのあるところかもしれない。(幸)
2019年製作/115分/R18+/日本
©2019「火口のふたり」製作委員会
配給:ファントム・フィルム
8/23(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください