2019年08月11日
鉄道運転士の花束 原題:Dnevnik masinovodje
監督・脚本:ミロシュ・ラドヴィッチ
プロデューサー: ラザル・リストフスキー、ペータル・リストフスキー
出演:ラザル・リストフスキー(『アンダーグラウンド』)、ペータル・コラッチ、ミリャナ・カラノヴィッチ(『パパは、出張中!』『サラエボの花』)
もうすぐ定年退職を迎える鉄道運転士のイリヤ(ラザル・リストフスキー)。線路上で立ち往生しているロマの楽士たちのワゴン車を見つけるが、ブレーキをかけても間に合わず、吹き飛ばしてしまう。これまでに多くの人を轢き殺してしまったイリヤ。懇意にしている精神療養士のヤゴダ(ミリャナ・カラノヴィッチ)のもとを訪ね、話を聞いてもらう。
若い時に妻を亡くし、子供のいないイリヤが迎えた養子のシーマ(ペータル・コラッチ)は19歳になり、代々続いている鉄道運転士を継ぐという。そんなシーマに、事故は避けて通れないと折に触れて語るイリヤ。
いよいよ運転士となったシーマ。3週間経っても無事故。緊張感に耐えられなくなったシーマを見かねて、イリヤは飛び降り自殺しようとしている男に、列車に轢かれてほしいと交渉する・・・
ミロシュ・ラドヴィッチ監督は、祖父が蒸気機関車の運転士で、チャンピオンというニックネームなのが自慢だったが、実は、勤務中に轢き殺してしまった数が最高だったことからついた名だと大人になって知る。線路上にいる人を見かけても停止が間に合わないことから、運転士は罪に問われることはない。そうした無実の殺人者への思いが本作の原点になっている。
運転士にとっての通過儀礼でもある人身事故。息子がなかなか体験できないのを助けようとする親心をユーモア交えて描いている。
ロマの人たちが奏でる哀愁漂う音楽に始まり、バルカンの情緒豊かな風景もたっぷり楽しめる。川を見下ろす墓地で、後ろに花束を持った親子の姿にほろっとさせられた。(咲)
鉄道運転士は人を轢き殺しても責任を問われず、自分は28人殺してしまったという定年間近の主人公。養子に迎えた息子が同じ鉄道運転士になった。主人公が「事故は避けて通れない」と折に触れて息子に語るため、息子は“人を轢き殺してしまうかもしれない不安”と“無事故を続ける緊張感”に押しつぶされそうになってしまう。そこで主人公はとんでもない手段に出た。
自殺、酔っ払い、注意散漫など電車による死亡事故。運転士には責任がないが、ストレスが溜まるだろう。同じ道を選んだ息子への過剰な気遣いがブラックジョークのように描かれるが、親は真剣そのものである。私も似たようなことをしていないか。ふと、心配になった。(堀)
2016年/セルビア・クロアチア/85分/2.35:1 字幕:佐藤まな
配給:オンリー・ハーツ
後援:セルビア共和国大使館
公式サイト:http://tetsudou.onlyhearts.co.jp/
★2019年8月17日(土)新宿シネマカリテほかにて全国順次公開
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