監督・脚本:安里麻里
原作:大石圭「アンダー・ユア・ベッド」(角川ホラー文庫刊)
撮影:鎌苅洋一
出演:高良健吾(三井直人)、西川可奈子(佐々木千尋/浜崎千尋)、安部賢一(浜崎健太郎)
三井直人は、家でも学校でも目立たず親にも存在を忘れられるような子どもだった。成長してもそれは変わらず、大学で「三井くん」と名前を呼んでくれたのは佐々木千尋一人だった。彼女と一緒にコーヒーを飲み、好きな熱帯魚の話をした11年前の思い出をずっと大切にしていた。
もう一度名前を呼ばれたい。すでに結婚していた千尋を探し出し、近所に熱帯魚店を開く。しかし、千尋はキラキラと輝いていたあの面影はなく、疲れて魂の抜けたような表情をして三井にも気づかなかった。思いつめた三井は合鍵を作って千尋の留守に侵入し、盗聴器をしかける。
「名前を呼ばれたいだけ」とは、なんとささやかな欲望でしょう。その孤独の深さを想像します。思うだけなら切なく純な片思いですむところが、思いが募って実力行使に出てしまいました。原作は恋愛小説でなく、ホラー文庫なんですね。ちょっと「人間椅子」を思い出しました。高良健吾さんがいくら前髪を伸ばしてお顔を半分隠しても、美男っぷりが漏れてきます。清潔感のあるこの人だから変な気持ち悪さがなく、純な印象のほうが勝つのでしょう。
エリートらしき夫は『ガチ星』のダメ父ちゃんの安部賢一さんではありませんか。シュッとスリムな体型に戻っていて、最初見違えました。今作ではDV夫役と、またもやダメ男路線ですが、監督によれば千尋のオーディションの時から夫役だったそうです。そのまま本番の役になったんですね。
夫の激しい暴力を受ける千尋を『私は絶対許さない』の西川可奈子さん。試写にいらしていましたが、あまりに細くて可憐な人だったので、帰り際「こんなに酷い目にあう役で、引きずって辛くなかったですか」と思わず聞いてしまいました。「辛かったけれど監督や出演者とよく話し合い、納得の上挑んだ」とのお答えでした。あざだらけになったそうで、なんとも根性のある女優さんです。激しい描写もありますが「あれも愛、たぶん愛、きっと愛」なんだと思いました(これ歌の文句にあります。古っ)。(白)
高良健吾さん演じる直人は、合鍵で千尋の部屋に忍び込んで、ベッドの下でじっと待機するのです。「え? おトイレ大丈夫?」と、トイレが近い私は心配してしまいました。でも、万全の態勢で臨むのです。その場面、一瞬ですのでどうぞお見逃しなく!高良健吾さんのそんな姿も可愛い♪(咲)
2018年/日本/カラー/シネスコ/98分/R-18
配給:KADOKAWA
(c)2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会
http://underyourbed.jp/
★2019年7月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
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