2019年07月11日

さらば愛しきアウトロー 原題:THE OLD MAN &THE GUN

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監督、脚本:デヴィッド・ロウリー
原作:デイヴィッド・グラン
出演:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、シシー・スペイセク、ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツ、チカ・サンプター、キース・キャラダイン

1980年代初頭からアメリカ各地で多発した銀行強盗事件の犯人であるフォレスト・タッカーは、15歳で初めて投獄されて以来、逮捕、脱獄を繰り返していた。彼は発砲もしなければ暴力も振るわないという風変わりなスタイルを貫き、粗暴な強盗のイメージとはほど遠い礼儀正しい老人だった。

ロバート・レッドフォード、アラン・ドロン…。欧米を代表する2枚目スターが時を同じくして引退を表明したことは、オールドファンとして考え深いものがある。演技以前の存在感(下手という意味ではなく)、スター・オーラ、スクリーンとの親和性や安定感に於いて、この2人を凌ぐ存在は今後しばらくは登場しないだろう。

レッドフォード、御歳83歳。本編のような快作で60年あまりの俳優人生の終止符を打つとは、なんと潔い幕切れか。花道を飾る送り出しびとは、自らが主催する「サンダンス映画祭」で見出され、『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』を監督して脚光を浴びたデビッド・ロウリー。相手役にシシー・スペイセクを配したことが成功の要因ではないか。温かく自然なもの腰、人懐こい笑顔、イノセントな瞳、市井の女を演じさせたら右に出る女優はいないだろう。レッドフォードとの絶妙な相性を見せてくれる。

銀行強盗仲間には、味わい深いトム・ウェイツとダニー・グローバー、レッドフォードを追い詰める刑事役を若手実力派のケイシー・アフレック、そしてキース・キャラダインまでカメオ出演させる粋な計らいが憎い。キャラダインの場面は是非お見逃しないように…。

終盤、銀行強盗や脱獄の履歴を過去の出演作と重ねる場面には胸が熱くなる。若かったレッドフォード…。この人の映画を観ていた”あの頃この頃”の想い出が否が応でもフラッシュバックする。かといって、決して感傷に溺れず、淡々とした描出に終止するロウリー監督の手腕により、余韻の残るエンドロールとなった。
アメリカン・ニューシネマでアンチ・ヒーローを演じてきたレッドフォードが、発砲もせず笑顔の似合う83歳になったのだ。幸せな気持ちになること請け合いの佳作である。(幸)


2018年/アメリカ/英語/93分/シネマスコープ/カラー/
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All
提供:バップ、ロングライド 
配給:ロングライド 
公式サイト:longride.jp/saraba/
★2019年7月12日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
posted by yukie at 11:58| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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