2019年06月27日
サマーフィーリング 原題:Ce sentiment de l'ete
監督:ミカエル・アース
脚本:ミカエル・アース、マリエット・デゼール
撮影:セバスティアン・ブシュマン
編集:マリオン・モニエ
音楽:タヒチ・ボーイ
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リヴィエール、フェオドール・アトキーヌ、マック・デマルコ、ドゥニア・シショフ、ステファニー・デール
夏真っ盛りのある日。30歳のサシャは突然この世を去る。彼女の死は、ある二人の見知らぬ者同士を出逢わせる。サシャの恋人ローレンスとサシャの妹ゾエ。突然の別れとなったベルリン。深い悲しみが残るパリ。少しずつ自分の生活を取り戻すニューヨーク。三度の夏、三つの都市。愛した人の思い出と幾つもの美しい景色の中で、遺された者たちは少しずつ人生の光を取り戻していくーー。
フランスでしか生まれ得ない佳編『アマンダと僕』で鮮烈な印象を残したミカエル・アース監督4年前の長編監督第2作である。16ミリフィルム・オールロケで撮影された本作も『アマンダと僕』同様、柔らかな光線、豊かで明るい色彩と自然光を取り入れることによって登場人物たちの心象風景を見事に描出している。
テーマの主軸となるのは『アマンダと僕』を想起させる喪失と再生である。2作に共通する点は多い。母性的な面から気付いたのは、子役の扱いが実に巧みな監督だということ。『アマンダ〜』では少女、本作の少年も台詞を与えられて喋っているとは思えない滑らかさで大人と会話し、存在する。子役の演技の不自然さに引っかかり、映画に没頭できない経験はしばしばあるが、アース監督作品ではその心配はない。
舞台は、ベルリン、パリ、ニューヨーク、3都市で時を遷移しながら、映す季節は常に夏。公園、海辺、新緑、散歩、自転車…。話す言語やちょっとした小道具、摩天楼といった背景がなければ、登場人物たちは同じ世界を彷徨しているようにも見える。
涼風、空気感まで流れてくる気がするのは、フランスの名匠エリック・ロメールの作風を踏襲しているせいか。日常に沈殿する哀しみも弾ける歓びも、殊更に強調されず、淡々と運ばれる演出が心地好い。
フランス映画ファンには懐かしい『緑の光線』のマリー・リビエール、『女の一生』での好演が記憶に新しいジュディット・シュムラなど、フランス映画に登場する女優は本当に魅力的だ。主演のアンデルシュ・ダニエルセン・リーはノルウェー生まれ。医師、作家、ミュージシャンでもある才人。今後は要注目したい。(幸)
2015年/フランス・ドイツ//カラー/106分
配給:ブロードウェイ
©Nord-Ouest Films - Arte France Cinéma - Katuh Studio - Rhône-Alpes Cinéma
公式サイト:https://summerfeeling.net-broadway.com/
7月6日(土)より全国公開
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