2019年06月27日
Girl/ガール 原題:Girl
監督・脚本:ルーカス・ドン
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
出演:ビクトール・ポルスター、アリエ・ワルトアルテ
15歳のトランスジェンダー、ララは娘の夢を応援する父に支えられ、バレリーナを目指して難関のバレエ学校への編入を果たす。それと同時にララが待ち望んでいたホルモン療法も始まるが、効果はなかなか現れなかった。それでも夢のためにバレエに没頭し、そのかいもあって先生の目も少しずつララに向けられるようになる。
近年、トランスジェンダー役をシスジェンダー(身体的性別と性同一性が一致している人)が演じることへの批判が起きているようだ。が、そうした議論は観客にとって関係ない。トランスジェンダーであろうと、シスであろうと肝心要はその俳優が「役を生きているかどうか」だ。本作の主役であるビクトール・ポルスターが現実にはシスであっても「ララ」その人にしか見えない。それほどに、本作に於けるララとビクトールは一体化している。
少女の繊細な感情を生理的な面にも目を逸らさず演出した監督・脚本のルーカス・ドンは、これが長編デビュー作とは思えない安定感を見せる。また、完璧なララ像を造形し得たビクトール・ポルスター無しでは成立しなかった秀作だろう。
成長期にあって、男性性器をレオタードの中に収める苦しさ、テーピングの痛さ、トイレやシャワールーム、あらゆる場所でララの身心を疼痛と困難が駆けめぐる。豆だらけで血まみれになった爪先…。カメラは容赦なくトランスジェンダーが立ち向かう過酷な”日常”を映し出す。飛び散る汗、涙。これほど身体性を痛痒させる青春映画は少ないのではないか。
主人公の痛みを家族や周囲の理解が支える展開が救いだ。本作は第71回カンヌ国際映画祭〈カメラドール〉(新人監督賞)を受賞した。ルーカス・ドンは、ベルギーを超越した新世紀映画界の監督となる大器の予感がする。(幸)
2018年/ベルギー/カラー/105分
©︎Minuet 2018
配給 クロックワークス、STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト: http://girl-movie.com/
7月5日(金)より全国公開
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