2019年05月17日

ベン・イズ・バック(原題:Ben Is Back)

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監督・脚本:ピーター・ヘッジズ
撮影:スチュアート・ドライバーグ
音楽:ディコン・ハインクリフェ
出演:ジュリア・ロバーツ(ホリー)、ルーカス・ヘッジズ(ベン)、キャスリン・ニュートン(アイヴィー)、コートニー・B・バンス(ニール)
クリスマスイブの朝、郊外のバーンズ家に長男のベンが突然戻ってきた。薬物依存症の更生施設から抜け出してきたのだ。母のホリーは思いがけない帰宅を喜び、抱き締める。継父のニールと妹のアイヴィーはこれまでのベンの行動から、懐疑的に見ている。継父との間に生まれた幼い弟妹たちは、屈託なく再会を受け入れる。教会での行事の準備やクリスマスプレゼントの用意に大わらわの中、ベンは母と出かけたショッピングモールで、会いたくなかった昔の仲間に見つかってしまう。一家が教会の催しから帰宅すると家の中が荒らされ、愛犬が消えていた。

仲の良い夫婦、可愛い子供たちの家庭に戻ってきた長男の存在は、その家族の平和をかき乱します。薬物依存で心も身体もぼろぼろになっていく映画はなんと多いことか。日本の自殺者の数に驚いていたら、アメリカでは薬物依存からの死亡者がもっと多かった。つい先日公開された『ビューティフル・ボーイ』は誘惑に絡めとられてしまう息子と、彼を救おうと奮闘する父親、今回は息子と母親のストーリーです。どちらにも共通するのは、決してあきらめず見捨てないこと。
まず母親ホリー役のオファーを受けたジュリア・ロバーツの強い希望で、息子のベンはピーター・ヘッジズ監督の実子のルーカス・ヘッジズに決まりました。活躍著しいルーカスですが、父親の作品には出ない、と固く決めていたそうです。ところが、ジュリア・ロバーツの希望だと聞いたとたんその決心は瓦解(笑)。また父親役のコートニー・B・バンスとの共演というのも後押ししたようです。辛く緊張を強いる内容を緩急つけて心を掴むストーリーに仕上げたピーター・ヘッジズ監督の手腕。息子ルーカスの尊敬の念も増したのではないかしら。(白)


子どもが薬物依存に陥ったとき、親はいったい何ができるのだろうか。本作の母親は夫が何を言っても、最後まで息子を見放さない。更生に向けて必死に道を探る。しかし、そんな母親でも息子が更生施設を飛び出してきたとき、息子を信じ切れず、金目になるものを隠す。その行動を娘に指摘され、慌てふためき葛藤する。必死になりすぎて行動に辻褄が合わなくなるのは子育てにはよくあること。母親を演じたジュリア・ロバーツの熱演とともに、ピーター・ヘッジズの脚本の細やかさを感じた。
ところで、本作の息子は自分から薬物に手を出して依存症になったのではない。14歳のときにスキーで脚をケガしたときに、医者から処方された鎮痛剤がきっかけだと作品の途中で分かる。母親が「大丈夫なのか」と確認していたにもかかわらず。疑問に思ったのなら医者を変えておけばよかったと、母親は後悔したに違いない。その医者と街で再会すると、認知症になった医者は息子のことさえ覚えていなかった。母親は医者に対してこっそりと暴言を吐くのだが、それは自分自身に掛けた言葉に聞こえる。(堀)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/103分
配給:東和ピクチャーズ
https://benisback.jp/
(C)2018- BBP WEST BIB, LLC
★2019年5月24日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
posted by shiraishi at 00:33| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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