2019年04月21日

イメージの本 原題 :LE LIVRE D‘IMAGE 英題 THE IMAGE BOOK

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監督:監督・編集・ナレーション:ジャン=リュック・ゴダール
撮影・編集:ファブリス・アラーニョ


ヌーヴェルヴァーグの巨匠として知られるジャン=リュック・ゴダールの異色作。数々の絵画、映画、文章、音楽をコラージュした映像でつづる5章で構成された物語に、現代にはびこる暴力、戦争、不和への思いを込める。第71回カンヌ国際映画祭でスペシャル・パルムドールに輝いた。


ゴダール御歳88歳、四年を掛けた新作である。あぁ〜!ゴダールの聴き慣れたゴダールの声によるナレーションの何たる心地好さ♪ 押し寄せるイメージの洪水。5章に構成され、奇跡のように再構築された夥しい引用映像の数々…。まるでゴダールの脳の中を覗いているような興奮を味わう83分だ。

地球上に充満し、止むことのない暴力・戦争・不信、不条理、不満 、不安、哀しみ、怒りに対して、ゴダールは過去の多くのアートを引用しながら再構築して行く。これがゴダール流の表現方法なのだ。

撮影のファブリス・アラーニョが撮り下ろしたオリジナル映像も、抜群に”ヌケの良い”美しさなのだが、個人的には古今東西、様々な映画の一場面を引用する形式に強く惹き付けられた。

ブニュエルが登場したかと思えば、溝口健二の『山椒大夫』、それも水戸光子が襲われる場面である!劇的なカットからゴダールは何を伝えたかったのか…。

イラン、アラブといった中東地域・紛争地帯の映像も多く引用される。古いイラン映画へのオマージュにより、これら貴重な文化や風土が失われることを危惧しているのだろう。
続けて流れる悲惨な映像群も、ゴダール独得のコラージュが施されているため、散文詩の如き叙情的な話法で語られる。まさにゴダールしか到達し得ない深度であろう。

物心ついてから見続けてきたゴダール、本作を観て中座したい人、居眠りしたい人…がいたとしても構わない。観客を置き去りにした潔さがゴダール流なのだ。

バッハ、シュトラウスなどの壮麗な楽曲も、ぶつんぶつんと場面により平気で途切れる。困惑する人もいるだろう。が、人の”意識”とはこのように断片的なものなのではないだろうか。それを映像にして提示してくれたゴダール。

88歳にして実験性を忘れず攻め続けるゴダールの姿勢を体感して欲しい。(幸)


2019年/カラー/84分
配給:コムストック・グループ
(C) Casa Azul Films -Ecran Noir Productions-2018
公式サイト:http://jlg.jp/
2019年4月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほかロードショー
posted by yukie at 18:21| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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