2019年04月20日

僕たちのラストステージ 原題:STAN & OLLIE

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監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー

かつて世界中を席巻したお笑いコンビ、ローレル&ハーディのスタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)とオリバー・ハーディ(ジョン・C・ライリー)は1953年、イギリスでホールツアーを開始する。最初は待遇も客入りも悪かったが、めげずに互いを笑わせ合いながらツアーを続けるうちに、かつての人気を取り戻す。しかし、ある口論をきっかけにオリバーはコンビ解消を決意する。

日本でいえば往年の浅草お笑い芸人のような味わいの2人組「ローレル&ハーディ」。彼らの人気は国際的なものだった。1920年代から100本以上の作品に出演。サイレント映画がトーキーに移っても人気は一向に衰えることはなく、ハリウッド・コメディ界の頂点を極めたコンビ。世界中に熱心なファンがいた。ちなみに日本では「極楽コンビ」と呼ばれ、公開作品は『極楽○○』、『○○極楽』になるのが定番だったそう。座布団敷きの小屋で大笑いする庶民たちの顔が浮かぶようだ。

本作の冒頭6分間1カットの長回しショットから度肝を抜かれる。楽屋を出た2人がハリウッドのスタジオを通り抜け、プロデューサーとギャラについてまくし立てるまでのテンポの良さ!ジョン・S・ベアード監督の意気込みとコンビへの愛情が伝わり、既に胸熱になってしまう。

人気の落ちた晩年、ニューカッスルを皮切りにマンチェスター、リヴァプール、グラスゴーなど英国中を巡り、アイルランドへと渡るロードムービーでもある。’50年代の英国のうら寂れたホテル、小屋、社会風俗の様子、人々の衣装やヘアスタイルまで細部のディテールにも手を抜かない創りが嬉しい。

何より素晴らしいのは、スタン・ローレルに扮する英国の名コメディ俳優スティーブ・クーガンとオリバー・ハーディ役ジョン・C・ライリーの絶妙な呼吸による演芸の再現。100年経ったとしても陳腐化しないであろう”至高の芸”に笑った笑った。これぞエンターテイメント。やがてホロリとさせる演出展開、芝居の上手さには唸らされる。

脇役も魅力的だ。2人の他にハロルド・ロイドを見出した目利きプロデューサーには、巨匠ジョン・ヒューストンの息子ダニー・ヒューストン(『ナイロビの蜂』など)。ベアード監督の代表作、ジェームズ・マカヴォイ主演『フィルス』を観た人なら、あのキャンディヴォイスが忘れられないシャーリー・ヘンダーソンが、ハーディの妻に扮し、アクセントを添えている。
実際のローレル&ハーディの映像が流れるエンディングまで眼が離せない98分。こうした地味な佳編が観られる幸せを映画ファンとして噛みしめた。 (幸) 


2018年/イギリス・カナダ・アメリカ/英語/カラー/スコープ/98分
配給:HIGH BROW CINEMA
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018
公式サイト:http://laststage-movie.com/
★2019年 4月19日(金)より、新宿ピカデリー他、全国公開
posted by yukie at 13:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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