2019年03月17日
ベトナムを懐(おも)う(英題:Hello Vietnam)
監督:グエン・クアン・ズン
脚本:タイン・ホアン、タイ・ハー、グエン・クワン・ユン
撮影:グエン・チン・ホアン、ジェップ・テー・ビン
美術:ラ・バグズリー、レ・ゴック・クオック・バオ
音楽:ドゥック・チー
出演:ホアイ・リン(トゥー)、チー・タイ(ナム)
1995年のニューヨーク。トゥーはベトナムの農村で生まれ育ち、幼馴染と結婚し、つましく暮らしてきた。妻が亡くなって、アメリカに渡った息子グェンの元にやってくるが、同居は叶わずに老人ホームに入居する。たった一人の孫娘タムはアメリカ生まれで、習慣・価値観の全く違う祖父に懐いてはくれない。妻の命日にホームを抜け出したトゥーは、親友のナムを誘い二人だけで伝統的な供養をする。そして、トゥーを怖がっていたタムの本心を初めて聞くことになった。
ベトナム人家族3世代の故郷への思いを綴った作品。トゥーが思い出すのは、緑深く陽光が降りそそぐ故郷。今は暗い空から雪が舞うニューヨークに住んでいます。この対比に望郷の思いが伝わってきます。トゥーの胸の中にある故郷はいつも美しく輝き、味わったはずの苦労は時間が薄めてくれています。
孫娘のタムにとって、ベトナムは見知らぬ外国に過ぎません。祖父のトゥーがよかれと思って伝える習慣も、押し付けにしか思えず、いやでたまりません。真ん中の世代のグェンが、父と娘タムの間の大きな溝を埋める役割、架け橋にならなければいけないのに、と疑問が浮かびます。グェンには故郷を忘れてしまいたい理由がありました。タムがあまりに頑なに祖父を拒否するのも不思議でしたが、このわけも後でわかります。タムのボーイフレンドがごく普通に接するのが救いでした。
異なる世代の思いが理解されず、すれ違ってしまうのは現代でも起き得ること。まず「何故?」と相手を知ろうとすること、自分の心を開くことですよね。(白)
息子グェンのもとに行った父トゥーはなかなかアメリカの生活に馴染めないのに、母の命日にさえ、グェンは仕事で忙しくて家にいられません。アメリか育ちの孫娘タムからは、家の中で火を使う命日の儀式を拒否されてしまいます。こんな祖父と孫娘のやりとりに、いらっとしてしまいます。
2017年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された折に来日したグエン・クアン・ズン監督が、「間違っているのでなく違うのだと、それぞれの世代に感情移入して観ていただければ」と語っていたのを思い出します。息子グェンは、1975年のベトナム南北統一で、ボートピープルとしてアメリカに渡った人物。物語の最後には、離れなければならなかった故国を思う気持ちがじんわり伝わってきました。(咲)
雪のニューヨークでベトナムを想う家族 ベトナム戦争の影は今も
ボートピープルとしてアメリカに渡ったグエンの思い、アメリカで生まれた娘タムの思い、ベトナムに残ったけどアメリカに呼び寄せられた祖父トゥーの思い、世代や文化のギャップの相容れない状態が最初描かれるけど、そこから彼らがかかえた切ない背景へと迫り、最後はそれぞれが祖国を想う切なさが描かれる。それに感動しました。
本作はベトナムで1990年代から演じられてきた舞台を映画化した作品。劇中で歌われるのは、戦いへ赴いた夫を待つ妻の切なさを歌ったもので、その歌のタイトル「Dạ Cổ Hoài Lang(夜恋夫歌)」がベトナムでの原題だそう。
本作の監督は『超人X』や、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のベトナムリメイク『輝ける日々に(「サニー」ベトナム版)』のグエン・クアン・ズン監督。いまやベトナムのヒットメーカーです。これらは大阪アジアン、アジアフォーカス、東京国際映画祭で紹介されました。
それにしてもグエンはベトナムから父トゥーを呼び寄せたのに老人ホームに入れてしまうし、母の命日にもその弔いの催しもしない。一緒に暮らす余裕もないのに親を呼び寄せるということがよくわからなかった。父親にこんな思いをさせるくらいなら、ベトナムにいたほうが幸福だったのではとも思う(暁)。
2017年/ベトナム/カラー/シネスコ/88分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)HKFilm
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー
◎公開初日にはスペシャルトークイベントが決定しました。
SPゲストに元「アイドリング!!!」の創設メンバーとして活躍し、現在も女優として活動中のベトナム出身の美人女優・フォンチーさんが登壇します。
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