監督:エリック・ポッペ
脚本:シブ・ラジェンドラム・エリアセン、アンナ・バッヘ=ビーク
撮影:マルティン・オッテルベック
出演:アンドレア・バーンツェン(カヤ)、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン(エミリエ)、ジェニ・スベネビク(オーダ)、アレクサンデル・ホルメン(マグヌス)、インゲボルグ・エネス(クリスティーネ)
7月22日、ノルウェーの首都オスロ。近郊のウトヤ島では労働党青年部のキャンプが始まっていた。カヤは妹のエミリエと一緒に参加している。心配する母親に「世界一安全な島」と返し、エミリエの面倒を見ることを約束した。テントにエミリエを残して友人たちと談笑していると、突然銃声が聞こえ、血相を変えた男女が逃げてくる。急いでテントに戻るがエミリエはもういなかった。オスロ市内では爆発があったと知ってますますパニックになる。カヤたちは何が起きているのかわからないまま逃げ出し、散り散りに隠れ場所を探す。警察に電話をするが、島まで救援に来るのには時間がかかる。その間にも銃声と悲鳴が聞こえている。
2011年に本当にあった事件をもとに作られたフィクションです。冒頭は集まってきた若者たちのシーンが続き、彼らの夢や希望が語られます。その後、最初の銃声が聞こえてから72分間ワンカットで、実際にこの事件が収束するまでと同じ時間を映しています。この間、観客はカヤと一緒に逃げ惑い、エミリエを探し、助けてやれなかった子どもの死に泣くことになります。犯人の姿ははっきり見えず、音楽もナレーションもありません。カメラがアップで映し出す表情、息遣い、足音などで緊張感が途切れず、テロ事件を体感させます。映画が終わったときには大きく息をつきました。
犯人はたった一人の極右思想の男。周到な準備をして、オスロ市内で市庁舎を爆破した後、ウトヤ島に移動して無差別銃乱射事件を起こしています。オスロでは8名、ウトヤ島では69名もが亡くなっています。
エリック・ポッペ監督はかつて戦場カメラマンとして活躍した人、ジュリエット・ビノシュが報道写真家を演じた『おやすみなさいを言いたくて』にはご自身の体験が反映されているとか。このウトヤ島事件の切迫した臨場感にも色濃く出ています。(白)
キャンプ場に突然鳴り響く銃声。悲鳴とともに走り込んでくる人々。何が起きたのか。事件? 訓練? 状況がつかめないまま逃げ惑う。緊迫感が半端ない。2011年ノルウェーで起きた連続テロ事件を被害者視点で描く。難を逃れた生存者も忌まわしい記憶に苦しんでいるに違いない。(堀)
2018年/ノルウェー/カラー/シネスコ/97分
配給:東京テアトル
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★2019年3月8日(金)ロードショー