撮影・監督:近藤 剛
脚本:藁科 直靖
撮影:池田 俊己 横山 友昭
語り:山上 智
滋賀県に住む自閉症の古久保憲満さんが発達障がい(高機能自閉症)と診断されたのは小学生のとき。人とうまく接することができず、暴れがちだったが、小学校の美術の先生が憲満さんの絵の才能に気づき、もっと描くよう勧めると、水を得た魚のようにのめり込んだ。7年前からボールペンと色鉛筆だけで描く縦1.6m、横10mの超細密画に取り組んでいる。今では「アール・ブリュット=生の芸術」の世界で注目されるようになり、2014年にはスイスの美術館「アール・ブリュット・コレクション」のサラ・ロンバルディ館長に絵の寄贈を求められ、5点を寄贈した。また、自立するために、自動車の運転免許取得にも挑戦。何事にも前向きに挑んでいく憲満さんの健気な姿を2年半にわたって密着した。
アール・ブリュット(ART BRUT)とは
生(き)の芸術の意。第2次大戦後,J.デュビュッフェは,幼児,精神病患者,囚人あるいは完全な素人などの人々が純粋に自己の楽しみで制作した作品を収集し,こう呼んだ。 1947年,パリのドルーアン画廊の地下室で初公開。 48年には A.ブルトン,M.タピエ,J.ポーランらが原生芸術協会を設立。 5000点を超すコレクションはパリのガリマール社,ニューヨーク,パリ,ローザンヌと移動を繰り返した。無意識的な生の初原を示し,西欧的な論理化を得ていない芸術として評価された。(ブリタニカ国際大百科辞典より)
古久保憲満さんが取り組んでいる超細密画のテーマは「オリジナルの街」。インターネットやテレビで見たものと想像を組み合わせた街には鉄道、車、高速道路、空港、駅、ホテル、観覧車、軍隊、家電製品、食料など、さまざまなものが1つ1つ細かく描かれている。気になったものはインターネットを利用して、徹底的に調べたという。そんな憲満さんは「国際社会で孤立する北朝鮮は、障がいを抱え、友だち付き合いがない自分と似ている」といって、北朝鮮も超細密画に描く。冷静に自分を見つめる目に驚いた。美術の正式な教育を受けていないのではないかという疑念は偏見でしかないことに気づかされる。
今は両親とともに暮らしているが、いずれは自分一人になる。そのときを見据えて、自動車の運転免許取得に挑戦する姿に応援したくなった。(堀)
2018年/日本/90分/DC
製作・配給:パオネットワーク
★2019年1月26日(土)ポレポレ東中野にて公開