2019年01月27日

ジュリアン(原題:Jusqu'a la garde)

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監督・脚本:グザビエ・ルグラン
撮影:ナタリー・デュラン
出演:レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン)、ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン)、トーマス・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)、マティルド・オネブ(ジョゼフィーヌ・ベッソン)

11歳のジュリアンは両親がDVで離婚したため、母ミリアムと姉のジョセフィーヌの3人で暮らしている。離婚調停で共同親権となったため、ジュリアンは毎週末父のアントワーヌと会わなければならない。アントワーヌはミリアムの電話を聞きだそうとするが、母親を守るため、ジュリアンは必死で嘘をつく。短気で激昂しやすい父親が母親にひどいことをしないように。ジュリアンの態度に、アントワーヌはますます妻に執着する。

ジュリアンの苦しげな表情のポスターに悪い予感がしてしまいます。お父さんの目が怖いです。口が優しい台詞を吐いても、目の鋭さは消えません。赤頭巾ちゃんの狼を連想しました。狼は空腹でした。この父親は家族に疎まれて愛情に飢えています。相手を愛する方法と方向が違っていても、気づきません。
ジュリアンは、母親をかばってその父親の怒りをまともに受けてしまいます。母はジュリアンを父親に会わせたくなくとも、法律のために面会を拒むことができません。どうしたらいいのか、ずっと緊張して観ていて身体に力が入っていました。姉のジョセフィーヌが歌う場面だけ、ふっと息をつくことができます。このジュリアン役のトーマスくんは初の長編、父親役のドゥニ・メノーシェはいつもはニコニコして明るい人だそうで、俳優さんってすごい!それを引き出すルグラン監督もすごい!(白)


別れた妻や子供、あるいは妻の親や姉妹なども殺してしまう元夫が起こす事件が報じられることがあると、なぜこの人はこういう行動に出てしまったんだろうと考える。衝動的な行動に出てしまう人はやけくそになりやすいということなんだろうか、恨みをはらすためそういう行動に出てしまうのだろか。そういう行動に走らないようにするにはどうしたらいいのだろうと頭を抱えてしまった。でも、私にはやっぱり、そこまでしてしまう人の心がわからない。決して元妻にも問題があるとは思えない。やはり本人が制御できないものを持っているのだろう。だってそうじゃない人がほとんどなんだから。自分の行動を制御できない人が増えたら世の中どうなってしまうだろう。この作品は、それほどDVのすさまじさを表している(暁)。

=宣伝さんよりお知らせです=
この度、フランス時間2月22日(金)に開催されたフランスで最も権威ある映画賞「第44回セザール賞」授賞式にて、本作が最優秀作品賞、主演女優賞、オリジナル脚本賞、編集賞を受賞しました。本作のメガホンを執ったグザヴィエ・ルグラン監督は、『ジュリアン』が長編デビュー作です。
ルグラン監督は初監督作品での作品賞受賞に「素晴らしい、本当にありがとう。この作品は国際的に重要なテーマだった。」と出演者、スタッフ一同に感謝を述べたのち本作の題材「DV」が世界で問題になっていることを示唆しました。初めてセザール賞主演女優賞を受賞したジュリアンの母役を演じたレア・ドリュッケールは、自身の名が呼ばれると凛とした面持ちで登壇し、「私はこの賞を捧げたい。現実の中にいるミリアム(レア演じるDVを受けた女性)のようなすべての女性たちに。」と世のDV被害にあう女性たちに向けてメッセージを贈りました。

2017年/フランス/カラー/シネスコ/93分
配給:アンプラグド
(C)2016 - KG Productions - France 3 Cinema
https://julien-movie.com/
★2019年1月25日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 12:35| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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