2019年01月20日

ヴィクトリア女王 最期の秘密   原題:Victoria and Abdul

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監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:リー・ホール
原作:シュラバニ・バス
出演:ジュディ・デンチ、アリ・ファザル、エディ・イザード、アディール・アクタル、マイケル・ガンボン

1887年、インドが英領となって29年目。タージ・マハルのある町アグラで、刑務所の記録係をしている青年アブドゥル・カリムは、ヴィクトリア女王の即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に任命される。長身なのが決め手だったが、もう一人の献上役モハメドは代理で行くことになった背の低い男だった。二人は船で英国へ赴く。
ウィンザー城での祝宴を前に、献上する折、決して女王陛下と目を合わせてはいけないと注意を受ける。だが、アブドゥルは思わず女王を見つめてしまう。女王も「のっぽがハンサムだった」と気に入り、祝宴期間中、二人は従僕として女王のそばで働くことになる。女王はアブドゥルからタージ・マハルや絨毯、マンゴーや香辛料などインドの文化や食べ物のことを聞き、行ったことのない自国の領土に興味を示す。女王はアブドゥルを祝宴が終わってからも側近にし、ウルドゥー語の手ほどきを受ける。さらに、亡き夫アルバートが設計した離宮オズボーン・ハウスの1階にインドの装飾をほどこした「ダーバーの間」も作らせる。孔雀の王座の模倣も備え、そこでアブドゥルは古代ペルシアの王様の物語を演じる。
皇太子や王室職員たちは、女王にインドでイスラーム教徒が反乱を起こしたとしてアブドゥルの失脚を図るが、彼の人柄に信頼を置いていた女王は、ヴィクトリア勲章のコマンダー章を授ける。アブドゥルも終身、女王に仕えることを誓う。
だが、やがて女王は崩御。アブドゥルは皇太子から即刻出ていくよう命じられ、家族と共にインドに帰国する・・・

ヴィクトリア女王とアブドゥルの間で交わされた英文の書簡などは、女王が崩御するとすぐに焼かれてしまいましたが、女王のウルドゥー語の練習帳などは読めないこともあって破棄を免れ、王室文書館に保管されていたとのこと。インド出身のジャーナリストであるシュラバニ・バスは、その練習帳を読み解き、2010年に「ヴィクトリアとアブドゥル」を著し、二人の心情にも迫っています。アブドゥルの子孫をたどり、アブドゥル自身のロンドン時代の日記も発見。こうして、女王と彼の物語が世に知られることになりました。

映画では、即位50周年記念式典の為に、インドから来たアブドゥルを女王が気に入って側近にし、インドの文化に目覚めたと描かれていますが、実際には、元々女王は人種や宗教に偏見がなく、インドの文化にも興味を持ち、給仕としてインド人を雇い入れたのだそうです。
異文化や有色人種に対する偏見に満ちた皇太子や王室の側近の人たちと違って、ヴィクトリア女王が心の広い方だったことを知り、感銘を受けました。
何より、私も学んだことのあるウルドゥー語を女王も学んでいたことを嬉しく思いました。もっとも、私は、大学受験当時、東京外国語大学にまだペルシア語科がなく、ウルドゥー科でペルシア語が必修と知り受験し、入学させていただいたので、ウルドゥー語はあまり熱心に学びませんでした。きっとヴィクトリア女王の方が格段にウルドゥー語がお出来になったことと思います。
映画のタイトルも、ウルドゥ―語でも出てきます。どうぞご注目を。(咲)



◆ヴィクトリア女王が学んだウルドゥー語とは:

北インドを支配したムガル王朝の宮廷公用語はペルシア語。ウルドゥー語は、イスラームに改宗した人たちが、ヒンディー語をアラビア文字で書き、語彙にもアラビア語やペルシア語起源のものを取り入れた言葉。
アラビア語は28文字ですが、ペルシア語はアラビア語にない音4文字を加えた32文字。ウルドゥ―語は、ヒンディーのそり舌音を表記するため、さらに3文字加え35文字。デーヴァナーガリー文字で表記されるヒンディー語とは見た目は全く違いますが、文法体系は同じです。
現在、ウルドゥー語は、パキスタン・イスラム共和国の国語。パキスタンでウルドゥー語を母語とするのは、人口の約4分の1ですが、インドの主に北部のイスラーム教徒にも広く使われており、話者は世界で20番目に多い6100万人と言われています。



第90回アカデミー賞 衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞 ノミネート
第75回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディー部門)ノミネート

2017年/イギリス・アメリカ/112分/カラー/シネスコ
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト:http://www.victoria-abdul.jp/
★2019年1月25日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国ロードショー






posted by sakiko at 21:10| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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