2019年01月13日

マチルド、翼を広げ(原題:Demain et tous les autres jours)

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監督・脚本:ノエミ・ルヴォウスキー

出演:リュス・ロドリゲス(マチルド)、ノエミ・ルヴォウスキー(マチルドの母=ザッシンガー夫人)、マチュー・アマルリック(マチルドの父)、アナイス・ドゥムースティエ(成長したマチルド)、ミーシャ・レスコ(フクロウの声)


マチルドは9歳。パパとままは別居中。マチルドは情緒不安定なママと暮らしている。
学校の進路相談に来たママはトンチンカンなことを言って先生を困らせている。でもマチルドには優しいママが大好きで、家事だってなんだって自分でこなせるのだ。ある日ママは突然大きな荷物を持って帰宅する。開けると小さなフクロウが一羽、鳥かごに入っていた。
その日からマチルドには親友ができた。だってその小さなフクロウは、マチルドとだけ話すことができたから。

予測不可能な行動ばかり起こすママと、しっかりものの小学生。パパがいるけれども、あまり頼れなくて(なんとかしなさいよと思ってしまう)、小さなフクロウと二人頑張るマチルド。ファンタジー仕立でふんわり包んでいるけれど、子どもにはずいぶんと大変な状況です。それでも心が冷え冷えとしないのは、ママなりに自覚があってマチルドを大切に思っているから。マチルドもそんなママを愛していて、諦めたりしないから。監督・脚本・ママ役のノエミ・ルヴォウスキーはフランス映画でよく見かける女優さん。早くから監督をやっていたとは、この映画の資料で知りました。マチルドには自分の子ども時代が投影されているとのこと。演じる新星リュス・ロドリゲスが初演技とは思えません。

マチルドのよりどころになるフクロウがとても可愛いので、フクロウカフェに行きたくなるなぁと思っていたら、ちゃんとコラボしていました。映画の半券で、新宿と銀座の”フクロウカフェ もふもふ”の利用料金が200円引きになるそうです。詳しくはHPのリンクで。(白)


奇行や意味不明な会話を繰り返す母は介助なしには自立した生活が不可能に見える。それでもマチルドは豊かな想像力を支えに、母との生活を維持していた。
しかし、本当にその生活は成り立っていたのかは疑問である。片付けられた室内。おしゃれな服装や髪型。それらはすべて、マチルドの空想力というフィルターがかかっていたのではないだろうか。
母は妄想の世界に住み、マチルドは空想の世界に耽る。空想は妄想と違い、自分の意思で現実に戻ることができるものの、マチルドは時折、湖に沈んでいる夢を見た。それは空想の世界から抜け出せなくなる自分への恐れだったかもしれない。だから、大人になり、空想で逃げる必要がなくなったとき、水の中から飛翔したのだ。
単なるファンタジーとせず、現実を冷静に見つめた作品に仕上げたノエミ・ルヴォウスキー監督。自身の過去ときちんと向きあった監督の今後の作品が楽しみである。(堀)


2017年/フランス/カラー/ビスタ/95分

配給:TOMORROW Films.、サンリス

(C)2017 F Comme Film / Gaumont / France 2 Cinema


★2019年1月12日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
posted by shiraishi at 18:20| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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