2019年01月13日

未来を乗り換えた男(Transit)

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監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト
原作:アンナ・ゼーガース「トランジット」
撮影:ハンス・フロム
出演:フランツ・ロゴフスキ(ゲオルク)、パウラ・ベーア(マリー)

ドイツの侵攻が進む現代のフランス。ゲオルクは祖国ドイツから追われ、パリにたどり着いた。ホテルで自殺していた作家ヴァイデルの遺品を預かりマルセイユに向かう。遺品のトランクには身分証明書があり、不法入国のゲオルクは間違われたことを利用し、ヴァイデルになりすますことにした。マルセイユに来る途中に死んだ知人の妻子に報告にいき、その息子と束の間楽しいときを過ごす。街中で自分を振り向かせた女性マリーにゲオルクは目を惹かれる。マリーは作家ヴァイデルの妻で、マルセイユに来るはずの夫を探し続けていた。

ナチスの迫害から逃れて亡命した作家の体験が原作。クリスティアン・ペッツォルト監督は40年代の史実を現代のフランスに置き換え、ナショナリズムの風が吹き荒れるヨーロッパの状況と、平和な安住の地を求めてさまよう人々を描きました。ゲオルクはマリーと出逢い強く惹かれるのですが、マリーの夫ヴァイデルになりすましているため、真実を告げられません。ゲオルクとマリーがすれ違うことが何度かあり、いつばれてしまうのかとはらはらして観てしまいました。
同行しながら傷が悪化して死んでしまった知人の妻子とのエピソード、マリーを愛してしまったために出立するはずだった船から降りてしまう男性。それもこれも祖国を離れて、寄る辺のない難民になったことにつながります。ナチスドイツ時代の話を今に移して、何の違和感もないことに逆に戸惑ってしまったと監督。
日本から出ない限り、自分がマイノリティになることが自覚できない私たちも、いつどうなるか先はわかりません。深田晃司監督の『さようなら』(2015)では放射性物質に汚染された日本を捨てて、海外へ脱出する難民となる「私たち」が描かれていたのを思い出します。

フランツ・ロゴフスキは『ハッピー・エンド』(2018)でイザベル・ユペールの弟役でした。今年4月に主演作『希望の灯り』が公開予定。パウラ・ベーアは『婚約者の友人』(2017)のアンナ。本作で、二人や周りの人々が味わう苦境は決して他人事ではありませぬ。(白)


2018年/ドイツ、フランス/カラー/シネスコ/102分
配給:アルバトロス・フィルム
(c)2018 SCHRAMM FILM / NEON / ZDF / ARTE / ARTE France Cinema
http://transit-movie.com/
★2019年1月12日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 18:10| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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