2019年01月13日

バハールの涙   原題:Les filles du soleil  英題:Girls of the Sun

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監督: エバ・ユッソン
出演: ゴルシフテ・ファラハニ、エマニュエル・ベルコ

2014年8月3日、IS(イスラミックステート)がイラク北西部シンジャル山岳地帯のクルドのヤズディ教の人たちが住む村々に侵攻する。多くの成人男性が殺害され、女性たちは性奴隷に、少年たちは“小さな獅子たちの学校”でIS戦闘員として養成される。
それから3ヵ月後、弁護士だった女性バハールは、腕に夫と息子の名のタトゥーを入れ、銃を手にしていた。奴隷として売られていたが、臨月のラミアと共に脱出し、拉致された息子を取り戻すべく女性戦闘員で結成された「太陽の女たち」に加わったのだ。
そんな女性だけの戦闘部隊を、片目の戦場記者マチルドが取材にくる。最初は、彼女との距離を置こうとしたバハールだが、マチルド自身、ジャーナリストだった夫を戦場で亡くし、娘を置いての取材と知り、次第に心を通わせるようになる。さて、バハールは、無事息子を取り戻すことができるのか・・・

本作は、実際にイラクのクルド人自治区で、2014年8月3日から2015年11月13日に起きた出来事に着想を得た物語。
昨年、ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんによって、イラクのクルド人の中でも少数派のヤズディ教徒の人たちが、ISによって虐殺されたり、性奴隷にされたことが広く知られることになりました。ナディアさんについては、ドキュメンタリー『ナディアの誓い - On Her Shoulders』(2月1日公開予定)で詳しく紹介し、理不尽な扱いを受けたヤズディ教徒の人たちの気持ちに迫っています。
女性だけの戦闘部隊のことは、当時ニュースで知り、その勇気に驚かされました。【女性に殺されたら天国へ行けない】と信じるISの戦闘員たちに、女性戦闘部隊は恐れられたそうです。

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(C)2018 - Maneki Films - Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF (Television belge)
その先頭に立つ果敢な女性バハールを、イランの女優ゴルシフテ・ファラハニさんが体現しています。2008年、『ワールド・オブ・ライズ』でレオナルド・ディカプリオと共演、翌年、アスガル・ファルハディ監督の『彼女が消えた浜辺』に出演して以降、イラン国外に活動拠点を移し、最近では『パターソン』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』に出演。【世界で最も美しい顔100人】トップ10の常連としても名を知られています。
私が彼女に会ったのは、2004年のアジアフォーカス福岡映画祭の時のこと。『冷たい涙』(アズイゾラー・ハミドネジャド監督)で、クルドの女性を演じていたのですが、独学で学んだクルド語を映画の中で駆使していました。
笑顔が素敵なゴルシフテさんですが、戦闘員バハールという役柄、笑顔は封印。拉致された息子を取り戻したい母の思い、そして、無残な扱いを受けたヤズディの人たちの無念な思いを全身で表しています。
バハールとは、春のこと。ヤズディ教徒の人たちに、ほんとうの春が来ることを願ってやみません。(咲)


2018年/フランス・ベルギー・ジョージア・スイス/111分/カラー/スコープ/G
配給: コムストック・グループ/ツイン
公式サイト:http://bahar-movie.com/
★2019年1月19日(土) 新宿ピカデリー&シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!





posted by sakiko at 18:24| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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